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未来につなぐ資産運用

2017年05月01日

物江 陽子

先日、国際会議“RI Asia 2017”に参加してきた。サステナブル投資に関するこの会議は、欧州と米国、アジアで毎年開催されており、アジアでは2014年から東京証券取引所を会場にして開催されている。筆者は2015年から参加しているが、年々参加者が増え、熱気も高まっているように感じる。今年は東京都の小池百合子知事やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の水野弘道CIOが登壇したほか、国内外から金融機関や政府、調査機関などの関係者が一堂に会し、二日間にわたりさまざまなテーマで議論が行われた。

サステナブル投資とは、ポートフォリオの選定や管理に環境・社会・ガバナンス(ESG)の要素を考慮する、長期的視点に立つ投資手法で、社会的責任投資(SRI)や責任投資とも呼ばれる。Global Sustainable Investment Alliance(GSIA)によれば、世界のサステナブル投資の運用資産額は2016年初時点で約23兆ドルに達しており、2014年比25.2%の増加を見せている(※1)。世界の全運用資産に占めるサステナブル投資の比率は26.3%を占めているという。また、サステナブル投資運用資産23兆ドルの地域別内訳を見ると、欧州が52.6%、米国が38.1%を占めており、日本はまだ2.1%にとどまっている。

サステナブル投資には、財務分析にESG要素を統合するESGインテグレーション、特定のビジネスに関わる企業を投資対象から除外するネガティブ・スクリーニングなどさまざまな手法があるが、通底するのはその名にあるようにサステナビリティ(持続可能性)に関する問題意識である。サステナブル投資を牽引してきたノルウェー政府年金基金やカリフォルニア州職員退職年金基金は莫大な資産を運用し、その影響力が甚大であることから、彼らの投資が戦争や環境破壊、人権侵害など人類社会の持続可能性を脅かす諸課題に与える影響に敏感であり、そうした観点を投資先企業の評価や投資先企業との対話に組み込んでいる。ノルウェーやカリフォルニア州では、年金加入者は資産を増やすことだけを資産運用に求めているのではなく、投資がよりよい社会、よりよい未来につながってほしいという願いを有しているように思える。

翻ってわが国を見ると、家計の金融資産運用では現預金の比率が高く、有価証券投資の比率は低い。金融庁の調査によれば、投資未経験者のうち約8割が「有価証券への投資は資産形成のために必要ない」と回答しており、その理由として約6割が「そもそも投資に興味がないから」と答えている。「投資は損をするリスクがあり、怖いものだと思うから」「投資はギャンブルのようなもので、資産形成のためのものではないから」という回答もある(※2)。直接の有価証券保有についてこのように考えている人が多いということは、年金基金などを通じた間接的な投資においても同様である可能性が高いだろう。見えてくるのは、投資への知識不足や不安・不信である。

投資にリスクが伴うのは当然だが、そのリスクをコントロールする手法があるからこそ諸外国では有価証券投資が日本以上に行われている。そして、投資を通じて社会的な課題を解決していくという発想は日本ではまだまだ希薄であるように感じる。投資の役割は、投資先企業が新たな技術や製品、サービスを生み出すことに資することであり、それこそが投資者が得るリターンであるはずだ。雇用創出やグローバルな諸課題の解決につながる投資を拡大していく必要がある。

“RI Asia 2017”では、気候変動など環境問題の解決のための資金調達であるグリーンファイナンスも人気のトピックであった。近年、環境問題の解決のための事業に使途を限定して資金調達する債券であるグリーンボンドの市場が拡大しており(※3)、直接的に社会・環境問題の解決を目的とする「インパクト・インベストメント」も小規模ながら広がりつつある。金融教育では投資の資産形成への有用性にフォーカスされることが多いが、資産運用の社会的な役割についての認識を高めることが、「貯蓄から投資へ」の動きを進める上で必要不可欠だろう。

(※1)Global Sustainable Investment Alliance (2017) “2016 Global Sustainable Investment Review”
(※2)金融庁(2016)「平成27事務年度 金融レポート」
(※3)大和総研 ESGの広場 「グリーンファイナンスを考える」参照
http://www.dir.co.jp/research/report/esg/esg-place/

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