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「こども保険」の財源問題

2017年06月22日

リサーチ本部 執行役員 リサーチ担当 兼 政策調査部長 鈴木 準

「全世代型社会保障の実現」という課題がクローズアップされている。日本の社会保障システムは引退世代向け給付に偏っており、現状のシステムは維持可能性に欠けるにもかかわらず、高齢者が多数派になる社会でその改革が十分には進んでいない。結婚したい、子供を産み育てたい、就業と育児を両立させたいという現役世代の希望がかなわない社会は生産性を上げることができず、超高齢社会を維持する費用を負担できなくなる。

そうした中、自民党の一部から「こども保険」というアイデアが提案され、話題になっている。また、6月9日に閣議決定されたいわゆる骨太の方針では、子育て支援というよりは、人材投資強化の一環として「幼児教育・保育の早期無償化や待機児童の解消に向け、財政の効率化、税、新たな社会保険方式の活用を含め、安定的な財源確保の進め方を検討し、年内に結論を得」るとされた。

「こども保険」の提案に対しては、その思想や手法、規模や財源について百家争鳴になっているが、いずれにせよ引退世代偏重型の政策を全世代型にすることが高齢者層にとっても得策であることを明確にできるかがカギだろう。また、子供をもうけるかどうかはもちろん個人の選択だが、連帯して子育てをサポートする必要性を、子育てを終えた人々や子供を持たない人々を含めてどこまで共有できるかで制度設計が違ってくる。

第一に重要なことは、人材投資として制度を拡充するのであれば、それによる経済的・社会的効果が、どのようにどの程度見込まれるのか、事前に明確にすることではないか。長期的な費用対効果を明らかにすることは、単なるバラマキではないことを示すことになり、仕組みのブラッシュアップにもつながる。

第二に、何が政策として必要かが決まれば、次は財源をどうするかである。候補の一つは社会保険料だが、社会保険料は逆進性が強いという欠点があり、年金保険料であれば現役層しか負担しないことになる。医療や介護の保険料は高齢者層も負担しているが、やはり現役層の負担が極めて大きく、それでなくても厳しい現役層の可処分所得を減らす影響は無視できない。

全世代型というならば、広く薄く負担する消費税がベターだが、消費税率引上げによる物価上昇分だけ高齢者の受給額をスライドさせたのでは、これまた高齢者は負担しないことになる。そこで、公的年金等控除の見直しを検討してはどうか。現在の公的年金等控除は、基準額の70万円に65歳以上については50万円が特別加算され、最低120万円の控除を保障している。現役層の給与所得控除の最低保障は65万円であり、120万円と55万円も差がある。全世代で社会を支えることを考えるなら、新規の負担増を検討する前に、まずは収入に対する課税の中立性を確保すべきではないか。

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鈴木 準

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