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中国の格下げ~政府債務残高のGDP比は日本より少し低いくらい?~

2017年06月01日

経済調査部 主席研究員 齋藤 尚登

国際決済銀行(BIS)の統計によると、2016年9月末の中国の部門別債務残高のGDP比は、家計43.2%、政府46.1%、非金融企業166.2%であり、ここ数年は非金融企業の債務残高の増加ぶりが著しい。

政府債務残高のGDP比が意外に低いと思われる向きがあるかもしれない。しかし、非金融企業の債務残高の8割程度は国有企業部門によるものとされ、本来であれば政府が負うべき債務を国有企業が肩代わりしている可能性が高い。これを政府債務に準じると考えれば、中国の実質的な政府債務残高のGDP比は179.1%と、日本の同201.3%を若干下回る程度と見ることが可能である。5月下旬に、米大手格付け機関のひとつが中国の長期信用格付けの引き下げを決定し、日本と同じ格付けとしたのは、当然のことながら、この実質的な政府債務に対する健全性の低下を懸念したものであろう。

ちなみに、日本の政府債務残高のGDP比は高水準であるが、そのほとんどを国内勢が保有しているため、金融危機的なものは起こりにくいとの指摘がある。実は、これは中国にも当てはまる。国有銀行と国有企業の関係は極めて密接であり、銀行融資は国有企業に集中する傾向が強く、シャドーバンキング経由の資金調達も地方政府融資平台(中国版第三セクター)と呼ばれる国有部門が多くを占めた。いずれも資金の出し手のほとんどは国内勢である。

中国では2015年11月以降、習近平総書記が主導する「サプライサイドの構造改革」が推進されている。これは、(1)過剰生産能力の解消、(2)過剰不動産在庫の削減、(3)デレバレッジ(負債率の引き下げ)、(4)企業コストの引き下げ、(5)不足の補充(脱貧困やイノベーション重視など、中国経済が抱える問題点や弱点の改善、補強)の5つからなる。当局もデレバレッジの重要性を認識してはいる。

しかし、非金融企業のデレバレッジに拙速は禁物であろう。中国が市場メカニズムに基づき企業の優勝劣敗を徹底するなどして、企業の債務レバレッジの引き下げを急激に進めれば、企業倒産・失業者の急増や信用収縮が発生し、経済に大きなダメージを与え得る。

よってデレバレッジの前に、国有企業の収益性や製品の付加価値を高める政策の推進が先ずなされるべきであろう。さらに言えば、企業債務の膨張には、企業の資金調達手段として銀行融資といった間接金融への依存度が極端に高く、直接金融(株式市場)が有効に機能していないという問題も大きい。企業債務問題のソフトランディングには、国有企業改革と資本市場改革の推進が不可欠なのである。

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