2025年06月27日
サマリー
◆男女の所得格差の重要な背景の1つに、日本では男女での職種や業種の偏りがある。保育士や介護職員など女性が多いヒューマンサービス系専門職は賃金が低い傾向にある一方、比較的高賃金である科学・技術・工学・数学(以下、STEM)の専門職に女性が非常に少ないことが、所得格差の一因となっている。
◆女性のSTEM人材を増やすことは経済成長という観点からも重要だ。特にIT分野などで深刻な人材不足が予想される中、イノベーションや自動化・デジタル化を推進させる原動力となるSTEM人材の育成が急務とされる。
◆女性のSTEM人材が少ない理由として、①就業前の教育段階でSTEM分野を選択する人が少ないこと、②STEM分野を専攻しても職業選択の際にSTEM分野を選ばないこと、③STEM分野に就業した後に離職してしまうこと、などが考えられる。中でも日本は、①の教育段階のジェンダーギャップが大きく、これが女性のSTEM人材不足の根本的なスタート地点となっている可能性が高い。
◆OECDが実施する15歳の生徒の学習到達度調査(PISA)の理数系科目の男女の点差を見ると、日本とは異なり、海外では女性生徒の方が理数系科目の点数が高い国も見られる。しかし、そのような国でもSTEM女性人材が多いという訳ではない。理数系科目の点数はSTEM分野の基礎的な能力と直結していると考えられるものの、点数以外の要因が理系進路選択へ大きく影響している可能性は高い。
◆例えば、周囲の環境や価値観、特に親や教員などが持つ無意識のジェンダーバイアスは、女子生徒のSTEM分野への興味・関心や進路選択を大きく左右しやすい。STEM分野は男性の仕事という社会的なステレオタイプが家庭・学校・社会を通じて、女子生徒に影響していることが推察される。こうした状況を改善し、男女の所得格差是正や経済成長に繋げるためにも、教育段階からSTEM分野で活躍する女性というロールモデルへのアクセス確保や、興味を醸成するようなポジティブな理系経験を女子生徒に用意することが重要だ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
出産・育児に起因する男女の所得格差の是正
家族政策だけではChild Penaltyは解決しない?
2025年01月31日
-
出産・育児が生み出す男女の所得格差の実態
日本のChild Penaltyを推計
2024年10月08日
同じカテゴリの最新レポート
-
経済指標の要点(8/19~9/15発表統計)
2026年09月15日
-
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
-
消費税減税・給付の都道府県別影響
地域間格差は最大で1人あたり年間0.7万円程度、大都市圏の恩恵大
2026年09月14日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
-
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
-
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
-
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
-
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日

