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中国のスマホ決済600兆円~地域金融機関におけるFinTech活用

2017年04月05日

小島 一暢

3月24日の日本経済新聞に驚くような見出しの記事があった-「スマホ決済 中国8億人に」。さらに記事には「昨年のスマホ決済額は中国全体で前年比倍増の600兆円以上に達した。牽引しているのはインターネットサービス企業のテンセントが2014年にスタートしたサービスだ」とされている。

大雑把な計算だが、600兆円がすべて個人消費と仮定すれば、8億人で割ると一人当たり75万円、中国の人口約13.76億人(外務省HP)で割ると約44万円の消費がスマホ決済されていることになる。ちなみにIMFの最新データでは中国の一人当たりGDPは7,990米ドル(約90万円)。日本と中国のGDPが逆転し、世界2位と3位が入れ替わったのが2010年。中国のGDPデータとスマホ決済の金額の捉え方は粗いものの、この数年間で中国には経済規模の急拡大だけでなく、ライフスタイルにも急激な変化が起こっていることが分かる。

わが国の状況はいかがだろうか?600兆円といえばアベノミクスのGDP目標額、平成27年度の民間最終消費支出約300兆円の2倍という規模感である。スマホの普及率は相当に高いし、アマゾン、楽天、ヤフーなどの電子商取引(EC)も、宅配ビジネスの人手不足が深刻になるほど普及している。しかし、それでも、2015年のBtoC-EC市場の規模は13.77兆円(経済産業省)、年間の伸び率は5%弱にすぎない。13.77兆円のうち物販系は7.23兆円で、そのうちスマホ決済は1.98兆円、約27%である。日本全国で中国並みの急激なライフスタイルの変化が起こるとは考えにくく、特に人口の中心で金融資産の偏在する高年齢層では変化を指向しない人が多いのではないだろうか。

さて、ここで本題の地域金融機関である。いま地域金融機関は、人口減少や長期化する低金利という厳しい事業環境にあって、地域のお客様との共通価値を創造し、持続可能なビジネスモデルを構築することが求められている。この状況下、生産性・効率性の向上は明らかに喫緊の課題であり、FinTechの戦略的な活用により、金融機関としてのオムニチャネル戦略、すなわちリアル店舗やATMとインターネットバンキングをいかに融合させて生産性・効率性を向上させるか、またいかにECや物流等のサービスと連携するかが共通価値の創造と持続性確保の最大のテーマの一つといえる。

FinTechの戦略的な活用を推進するに当って、地域金融機関にとって最も重要なことは、いかにしてお客様の「お金や財産に対する安全・安心要求度の高さ、不安の強さ」に応えていくかという点である。そのためには、FinTechを活用した新しいサービスの裏にきちんと人間がいて、どれだけの安全性を確保しているかをお客様に認識してもらうことが必須である。人口減少と高齢化が急速に進む中で、既存店舗を統廃合・軽量化することで効率性を高める一方で、インターネットバンキングや付加価値サービスをお客様が安心して快適に利用できるよう、社内の研修強化やコールセンターのサービス向上とお客様へのセミナー、相談対応強化等により顧客接点を十分に整備して、情報発信や質問対応を地道に行っていくことが求められる。

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