2017年02月10日
年明け、日本老年学会・日本老年医学会から、高齢者の定義を現在の65歳以上から新たに75歳以上に引き上げようという提言が発表された(※1)。それに伴って65~74歳を准高齢者(pre-old)、75~89歳を高齢者(old)、90歳以上を超高齢者(oldest-old, super-old)と呼ぶように提言している。
同様に、政府の「2030年展望と改革タスクフォース」のなかでも、高齢者の年齢区分を65歳から70歳に変えることが議論された(※2)。ただ、この話は決して新しいものではなく、経済財政諮問会議の下に設置された「選択する未来」委員会が2014年5月にまとめた中間整理「未来への選択」でも、「70歳までを働く人(「新生産年齢人口」)と捉え直し、仕事や社会活動に参加する機会を充実させていく」と明記していた(※3)。平均寿命が長くなっていく過程で、高齢者の概念が時代ともに変化していくことに違和感はないだろうが、70歳のハードルはなかなか高いようだ。
人々の意識を内閣府の「平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査結果」(※4)で見ると、“高齢者とは何歳以上か”という質問に対して、回答者の多くは70歳以上(29.1%)、次いで75歳以上(27.9%)を選択しており、高齢者の定義変更は高齢者自身の認識とあまり乖離が見られない。また、75~79歳の人は75歳以上、80~84歳の人は80歳以上を最も選んでおり、自分よりも年上が高齢者ということだろう。過去15年間の変遷を見ても、徐々に上の年齢層にシフトしているものの、70歳以上から85歳以上までを選んだ割合は合計で約8割と大きく変わっていない。
一方、“支えられるべき高齢者とは何歳以上か”という問いに対して、直近の調査では80歳以上と75歳以上で約半数を占めており、自らは元気であるという意識も見られる。社会保障財政の観点からも重要なのは、日常生活に制限のない健康寿命を延ばして平均寿命とのギャップを縮小させることである。WHOによると(※5)、日本の健康寿命は74.9歳と国際的に見ても最高水準であり、逆にG7のなかで最も低いのが米国の69.1歳である。
さて、米国の第45代大統領であるトランプ大統領は就任した時点での年齢が70歳(1946年生まれ)と、レーガン第40代大統領(就任時69歳)を抜いて歴代最高齢となった。偶然にもトランプ大統領は、クリントン第42代大統領(1993年~2001年)とブッシュ第43代大統領(2001年~2009年)と同じ年生まれ、米国のベビーブーマーの一期生にあたる。現時点の退任時最高齢はレーガン大統領(77歳)だが、トランプ大統領がこの記録も更新してoldとして退任するか、あるいはpre-oldで退任してしまうか。就任してまだ一カ月も経たないが、就任前からの昼夜を問わない精力的な呟きに、元気な“高齢者”だなあと唯々敬服するのみ。
(※1)https://jpn-geriat-soc.or.jp/proposal/pdf/definition_01.pdf
(※2)ただし、2017年1月25日に公表された報告書のなかでは、“65歳以上を「高齢者」と一括りにする傾向のある社会の意識を変えていくべきである”とだけ明記された。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/2030tf/shiryou.html
(※3)ただし、2014年11月14日に取りまとめられた提言には、同文言は盛り込まれなかった。
(※4)調査対象は60歳以上。
(※5)WHO, Global Health Observatory data, Healthy life expectancy (HALE), Data by country
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- 執筆者紹介
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政策調査部
政策調査部長 近藤 智也
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