秋田県と島根県の人口動向を見て思うこと
2017年01月30日
平成27年国勢調査(人口等基本集計結果、出所:総務省統計局)によれば、平成27年10月1日現在の日本の人口は1億2,709万4,745人となり、前回調査(平成22 年)と比べて96万2,607人、率にして0.8%の減少となった。大正9年の調査開始以来初めての人口減少である。いよいよ、わが国は人口減少時代に突入したといえるだろう。
都道府県別で見ると、全国で最も人口減少が進んだのは秋田県だ。人口減少率は5.8%と全国1位である。同県はさらに、年齢別の人口構成比において65歳以上(老年)の割合(高齢化率)が33.8%と全国1位、15歳未満(年少人口)の割合は10.5%と全国最下位となる。つまり、高齢化も深刻だ。また、平成27年人口動態統計(確定数、出所:厚生労働省)によれば、秋田県は出生率(出生数/秋田県総人口)が5.7と全国最下位である。人口減少、高齢化とともに少子化も深刻な状況だ。
高齢化の進行、若年層人口の減少、出生率の低下、少子化の進行、何が鶏で何が卵かはわからないが、いずれも互いに作用し合う。多くの自治体にとっても深刻な問題であろう。一方、高齢化率が32.5%と 全国3位の島根県は、出生率は8.1と全国13位、合計特殊出生率(15~49歳までの女性の年齢別出生率の合計、1人の女性が生涯に出産する子供の数を表す)は1.78で 全国2位と、高齢化が進む県としては秋田県とは状況が異なる。これについて、島根県は子育て対策に力を入れてきたことが出生率の改善につながったという見解だ。しかし、今は多くの自治体で子育て対策に力を入れている。島根県の子育て対策が他県より優れていたという理由もあるだろうが、例えば雇用環境や暮らしやすさなどの様々な要素が影響しているのではないかと思う。
秋田県が公表する「あきた100の指標(平成28年版)」(※1)では、人口・世帯や産業全般、財政などの指標が都道府県別に示されている。それを見ると、秋田県は婚姻率が全国で最も低く、低い出生率に影響しているのかもしれない。また、就業者比率が低い(全国42位)ことも低い婚姻率に影響しているのかもしれない。筆者は高校生までを秋田県で過ごし、これまで特に暮らしにくいと感じたことはなかった。今子育て中の家族や親戚、友人からも、特に子育てをしにくいという話を聞くこともなく、子供たちは勉強、部活動に励み元気に頑張っている。文部科学省が実施する「全国学力・学習状況調査」では、秋田県の子供たちの学力は全国でもトップクラスだ。もしかすると、子育て対策よりも、雇用環境や暮らしやすさの改善が求められているのかもしれない。
(※1)あきた100の指標(出所:秋田県企画振興部調査統計課)
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
- 執筆者紹介
-
政策調査部
研究員 佐川 あぐり
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
中国:来年も消費拡大を最優先だが前途多難
さらに強化した積極的な財政政策・適度に緩和的な金融政策を継続
2025年12月12日
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
大和のクリプトナビ No.5 2025年10月以降のビットコイン急落の背景
ピークから最大35%下落。相場を支えた主体の買い鈍化等が背景か
2025年12月10日
-
12月金融政策決定会合の注目点
2025年12月12日

