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トランプ劇場で日本はインフレへと場面転換

2016年12月20日

金融調査部 主任研究員 長内 智

2016年の消費者物価の動向を振り返ると、年初から弱い動きが続いており、再びデフレの足音が聞こえ始めていた。消費者物価の基調を示す「コアCPI(除く生鮮食品)」の前年比は、2016年1月にマイナスへと転じ、翌2月こそ前年比横ばいとなったものの、3月から10月にかけては8ヶ月連続のマイナスを記録した。今のところ、2016年はこのままマイナス圏で終える確率の方が高い。この主因としては、2015年秋以降に一段と進んだ原油安と、2015年末以降の円高進行が指摘できる。

日本銀行が重視する参考指標(生鮮食品とエネルギーを除くCPI)もプラス幅が縮小傾向となり、2%のインフレ目標から大きく後退することとなった。こうした中、日本銀行は、1月にマイナス金利政策の導入を決めたほか、7月に追加緩和、9月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)政策の導入を決定するなど、デフレ再来を阻止すべく積極的に政策カードを切ってきた。

今後の物価動向を展望すると、2017年の景色は2016年とは一変して、インフレ色が徐々に濃くなると見込まれる。ただ残念ながら、これは日本銀行の金融政策の効果というより、トランプ劇場による影響が大きい。2016年11月8日の米大統領選挙において、事前の下馬評を覆して共和党のトランプ氏が勝利した後に、円安・ドル高が大きく進行し、足下で物価上昇圧力が急速に高まっている。

さらに、OPEC(石油輸出国機構)が11月30日に8年ぶりの原油減産で合意し、12月10日にはロシアなど非OPEC加盟国も協調減産に参加することで合意した結果、原油価格は足下で強含んでいる。為替レートと原油価格が現在の水準で推移する場合、コアCPIの前年比マイナス幅は縮小傾向を強め、来春までにはプラス圏へと転じる見込みである。

日本銀行の掲げるインフレ目標にとっては、まさに「神ってる」追い風だ。「2%」という目標は依然として非常に高いハードルながら、物価上昇率が徐々に高まる中で、2016年に見られた積極的な緩和スタンスは身を潜める公算が大きい。その結果、2017年の市場の関心は、国債買い入れ規模の縮小(テーパリング)といった、金融緩和政策の「出口」を連想させるような内容に向かうだろう。

今後の焦点は、円安・ドル高の持続性だ。保護主義的な考えを持つトランプ氏は、米国の製造業に悪影響を及ぼす現在の円安・ドル高を黙って見過ごすことはできないとみられる。今後、口先介入などを通じて円高・ドル安圧力をかけるリスクに注意が必要だ。さらに、トランプ政権の政策次第では、地政学的リスクが高まり、リスクオフによる円買いが進む可能性もある。もし、為替レートが円高方向に反転すれば、インフレ圧力も緩和することになる。

いずれにせよ、2017年の日本の物価動向は、トランプ劇場の台本に一喜一憂することになりそうだ。

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