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米国大統領選挙に改めて問う"大統領の資質"

2016年11月10日

金融調査部 主席研究員 内野 逸勢

今回の米国大統領選挙でも頻繁に問われた“大統領の資質”について振り返ってみたいと思う。ヒラリー・クリントン候補がドナルド・トランプ候補に対して、討論会で何度も口にしていた言葉である。報道されている“資質”に該当する英語は、調査の網羅性があるとは言えないが、1つではなく、leadership quality、leadership style、leadership skillという主に3つに集約されると思われる。

ハーバード・ビジネス・レビュー(2016年8月)(※1)では、leadership styleにフォーカスを当てている。結論としては、今回の大統領選挙では、自身の“フォロワー”つまり自分に投票してくれる有権者(選挙人)に対して、どれだけ有効かつ効率的に自分の意見を説明できるかの“資質(= style)”が重要であるとしている。こうなると、自身のstyleの“違い”を強調することに両候補が固執するのも理解できる気がするが、styleをリーダーの“資質”とした場合、客観的な評価に基づいて政策を語るよりも、自己保全的なフォロワーの立場に立った“分かりやすさ”に傾倒しやすいと思われる。このため、いわゆる、“ポピュリズム”につながる可能性も否定できないことから、本来の“資質”の意味するところは別にあると思われる。例えば、2012年のオバマ大統領とルーニー候補(当時)の選挙においては、leadership skillという言葉を使って、CEOが持つべき“資質”の共通部分を参照して、以下の5つのリーダーの“資質”について説明した資料(※2)がある。

  • 自分の知識レベルの認識と長所短所を客観的に許容する「自己認識(Self-awareness)」
  • 個人、組織、国全体の政策的な活動への参加を促す明確な「将来的展望(Vision)」
  • 自己認識に基づく自己の欠点を補完する「チーム組成(Building a team)」
  • 判断力の正確性を向上させる「失敗からの教訓(Learning from mistakes)」
  • 議会、マスメディア、利害関係者、他国などに配慮しつつ、“公共善”に立脚した複雑な政策課題を解決するために「政治システムを機能させること(Working the system)」

上記5つのスキルを持ったリーダーシップは米国大統領の必要不可欠とも言える“資質(=leadership quality)”のレベルと言えないだろうか。ただし、政治のリーダーの“資質”は、それを支える市民の“資質”(この場合は政治家を客観的に選択する眼力)によって左右される。来年は様々な主要国において、選挙が目白押しであるが、市民の“資質”は単に自己を保守するための主張の“スタイル”に固執することだけでないことを願いたい。

(※1)Harvard Business Review, “Hillary Clinton, Donald Trump, and the Danger of Comparing Leadership Styles” by Gianpiero Petriglieri, August 03, 2016
(※2)Fortune, “Is Obama or Romney a better leader? How to judge.” by John Ryan, August 14, 2012

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