成長戦略はどう総括されるのか

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2016年10月25日

2%の物価目標の達成が見通せない中、日本銀行は2013年4月から開始された一連の金融緩和策の総括的な検証を行った。2016年9月に開かれた金融政策決定会合では、その結果を踏まえ、政策の枠組みが見直された。

「2%」という目標は安倍内閣も掲げている。それは経済成長率であり、実質で2%程度を上回る成長を目指している。しかし、第二次安倍内閣の発足から4年近くが経過したが、その間の実質GDP成長率は年率0.8%にとどまっている。日本銀行と同様、目標達成への道のりはなお遠い。

これまでの政策の総括は、成長戦略についても実施されることになった。すなわち、成長戦略の司令塔である未来投資会議が、2017年1月を目途に「構造改革の総ざらい」を行う。具体的には、「本来実現すべき目的の達成状況を多角的に検証し、目標達成に真に必要となる構造改革課題を抽出」することや、「既存施策の深掘り・前倒しや新たな取組の抽出、産業界への取組の本格化の要請等」が行われる(第1回配布資料「成長戦略の課題と今後の検討事項」、2016年9月12日)。

成長戦略とは、様々な制度や規制の改革をボトムアップで積み上げ、マクロの目標を達成する試みだ。それだけに各施策の進捗管理や実効性の確保が重要である。この点、安倍内閣の成長戦略では工程表が作成され、政策群ごとにKPI(成果目標)が設定されている。またPDCAサイクルを回すためにKPIレビューが実施されている。

だが、これまでPDCAサイクルが十分に回っていたとは言えないだろう。関係会議の資料を見ると、KPIの進捗状況の定量的な把握は数値の表面的な評価にすぎず、その背景についての分析や検討が不十分と言わざるを得ない。進捗していると評価されたKPIの中には、循環的な景気回復によるもので、改革の成果とは判断できないものが少なくない。そして何より、成長戦略を3年以上実施しているにもかかわらず、なぜ経済成長率が低迷したままなのかという肝心な問いに対する答えが見当たらない。

その意味で、未来投資会議が構造改革の総ざらいを行うことは極めて重要である。成長戦略は歴代の内閣がそれぞれに作成してきたが、PDCAのP(プラン)ばかり目立っていた印象を受ける。真のPDCAサイクルを回すために、構造改革の総ざらいというC(チェック)に重心を移すことができるか注目される。

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神田 慶司
執筆者紹介

経済調査部

シニアエコノミスト 神田 慶司