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"女性の活躍" から "ダイバーシティ"へ

2016年05月24日

物江 陽子

わが国政府は2020年に女性管理職比率を30%にするという目標を掲げて施策を展開しているが、同じような活動は諸外国においてもある。英国では2010年に「30%クラブ」なる組織が結成され、取締役会の女性比率を30%に引き上げることを目標に活動している。同じ30%目標でもわが国と違うのは、ターゲットが管理職ではなく取締役会であるということ、そして活動の主体が政府ではなく上場企業の会長とCEOであるということだ。

背景には欧州におけるクオータ制(※1)の波もあるが、取締役会におけるジェンダーバランスの改善は、よりよいリーダーシップとガバナンスにつながり、取締役会のパフォーマンス改善につながるという考え方がある。英国はクオータ制を導入していないが、30%クラブなど企業の自主的な取り組みの結果、FTSE100採用企業における取締役会の女性比率は2010年の12.5%から2015年の26.0%へと急上昇した。30%クラブの活動は急速に拡大しており、現在、米国、カナダ、イタリア、オーストラリア、湾岸協力理事会(※2)、香港、アイルランド、マレーシア、南アフリカに支部が存在するという。

「女性」というのは、ダイバーシティ(多様性)のひとつの側面にすぎない。しかし、多様な人材を登用することが、組織の活性化につながり、イノベーションを促進するのだとすれば、取締役会において女性の登用を進めることは、そうしたダイバーシティ経営の指標のひとつとして捉えることができるかもしれない。

取締役会におけるダイバーシティへの関心は、機関投資家においても高まっている。その背景には、2000年代初頭のコーポレート・ガバナンスに関する一連の不祥事、2008年からの金融危機に際して、取締役会が十分に機能しなかったのは「集団思考」(group think)のためとの認識があるという。取締役会の構成員は非常に同質性が高く、異なる視点を持つことができず、リスクを予見できなかったというのである。このため、コーポレート・ガバナンスに関する機関投資家の国際的なネットワークであるICGN(International Corporate Governance Network)でも、2009年よりICGNコーポレート・ガバナンス原則に取締役会のダイバーシティに関する文言を追加し、投資先企業に取締役会のダイバーシティ推進を推奨している。

グローバル時価総額上位500社の取締役会女性比率の平均値の推移を見ると、2007年度の12.0%から2014年度には18.0%へと伸びている(※3)。このうち日本企業40社の平均値を見ると、取締役会女性比率は2007年度の0.9%から2014年度には3.9%へと伸びている。伸び率は非常に高いが、何しろ水準が低いため、まだまだ改革の余地は大きい。

日本企業における女性の登用が低水準にとどまっている背景には、性別役割分担などの文化的な要因もあれば、保育所の整備などの社会制度的な要因もある。企業だけではなく、社会全体での取り組みが求められていることは言うまでもない。しかし、産業構造が変化し、消費者のニーズが多様化するなか、企業経営にはこれまで以上に多様な価値観や革新的な考え方が求められている。多様化する時代の変化に適応するためには、企業経営においても、女性を含む、多様な人材の登用が求められているのかもしれない。

(※1)組織における女性比率を義務づける制度。ノルウェーやフランス、イタリア、ベルギー、オランダ、ドイツなどが上場企業などを対象に導入している。
(※2)Gulf Cooperation Council(GCC)。1981年にサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、オマーン、カタール、クウェートによって設立された。
(※3)Bloombergより。データ取得は2016年4月28日。

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