いよいよ始まるジュニアNISA
2016年03月29日
4月1日から、未成年者がジュニアNISA口座で投資ができるようになる。ジュニアNISAは未成年者を対象とした少額投資非課税制度であり、上場株式、株式投資信託などの投資から得られる売却益・配当等が非課税、すなわち本来課せられる20.315%の税金がかからない制度である。2014年から開始している成人NISAは20歳以上の日本国内在住者が対象であり、これまで未成年者は利用できなかった。年間の投資上限額は、NISAが120万円であるのに対し、ジュニアNISAは40万円少ない80万円ではあるが、非課税期間は成人NISAと同様5年間なので、最大400万円までの投資元本から得られる収益を非課税とすることができる。
ジュニアNISAは0歳から利用できる。実際には、親権者等が代理で資産運用を行うことになるが、子どもの将来に向けた教育費用などを非課税で準備でき、長年日本人に必要だと言われ続けてきた若年層への投資教育がまさに「実践」で行われることになり、未来の投資家を育むことができる制度でもあるといえよう。
今後ジュニアNISAが有効な制度になるかを予想するにあたり、ジュニアNISAの模範となった英国ジュニアISAが参考になる。英国ジュニアISAは、2011年11月から開始されている。ジュニアNISAと同様に18歳までの引き出し制限があり、18歳以降はISA口座に移管される制度となっている。
英国ジュニアISAの金融商品残高(株式型)は、2013年4月の時点では1.67億£(約267億円。以下1£=160円換算)であったが、2015年4月には、5.15億£(約824億円)と約3倍増えている。
もちろん、単純な比較はできないが、英国と比較するとわが国の未成年者人口の方が多い(英国:約1,500万人(※1)、日本:約2,230万人(※2))こと、わが国のジュニアNISAの方が、年間の拠出上限額が多い(英国:約65万円、日本:80万円)ことを考慮すれば、わが国のジュニアNISAにも導入後4年間で1,000億円程度の資金流入があっても、あながちおかしくはないのではなかろうか。

ジュニアNISAへの資金の拠出者は、まず親であると考えられるが、実際には、日々の生活費や住宅ローンの支払いなどに追われて、非課税の恩恵を受けるために子が18歳になるまで引き出せないジュニアNISA口座に資金を拠出することは、ためらわれるかもしれない。
そこで、高齢者から若年層への資産移転を促す意味でも、祖父母からの資金拠出が期待されることになる。
現状では、高齢者への金融資産の偏在は進行の一途をたどっており、相続があっても、若年層への資産移転が進みにくい状況となっている(いわゆる老老相続)。
このような状況の中、ジュニアNISAが世代間の資産移転を促進する有効な制度になることも期待したい。
(※1)英国国家統計局(Office for National Statistics)Annual Mid-year Population Estimates : 2014
(※2)総務省統計局 人口推計-平成28年3月報-
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金融調査部
金融調査部長 鳥毛 拓馬
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