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日韓通貨スワップの再締結の是非

2016年02月08日

政策調査部 主任研究員 神尾 篤史

日本と緊急時に通貨を融通し合う通貨スワップ協定の再締結を検討する、という旨の韓国企画財政相の就任直前の発言などもあり、日韓通貨交換協定の再締結が話題になり始めた。日本側は麻生財務大臣、菅官房長官が必要であれば協力するという態度を示している。日韓通貨スワップは2015年に協定期間が満了している。

国家間の通貨スワップとは、危機が生じた国から要請があった時、短期の流動性を供与するために、互いの通貨を交換したり、当該国の通貨と要請を受けた国が保有する外貨準備(主にドル)を交換したりするものである。日韓の通貨スワップは短期の流動性を供与するものとして、円・ウォンの交換に加え、円とドル、ウォンとドルを交換するものであった。

日韓通貨スワップについてよくある誤解は、資金の無償提供を行っているのではないかという指摘だ。だが、一定の国力がある者同士で互いの通貨を交換するのだからそのようなことにはならない。また、日韓通貨スワップの詳細な内容が公表されていないため定かではないが、通貨スワップでは通貨の交換に金利を付すことが一般的である。通貨スワップの要請を受けた国から見れば、担保(相手国の通貨)を取った貸出というイメージである。

協定の再締結の是非を考える上で韓国の状況を確認しよう。為替はウォン安傾向にあり、2014年8月末から2016年1月末にかけて約15%のウォン安ドル高となっている。通貨危機などによって他国への外貨建て債務の返済等が困難になった場合に使用する外貨準備高は、2015年末時点で3,680億ドルである。金額ではなく韓国の対外短期債務残高と財・サービス輸入金額(※1)との見合いで見ると、対外短期債務残高に対しては3.1倍(2015年9月末)、財・サービス輸入金額に対しては8.2ヶ月分(2015年末)であり、前者は1倍以上、後者は3ヶ月以上という一般的に言われる適正な水準を超えている。さらに韓国は、危機時にドル資金を融通するASEAN+3のチェンマイ・イニシアティブにも参加している。

このような状況を見ると、日韓の間で通貨スワップ協定を再締結する必要は小さいように思われるが、実は韓国の外貨準備に占めるドル資産の割合は6割にとどまっている。ドル資産のみを外貨準備と仮定して試算すると、対外短期債務残高に対しては1.8倍の規模であり、若干心許ない。また、外貨準備の資産別構成をみると、流動性の高い預金と国債の合計が4割にとどまり、残りは政府機関債、社債、ABS、株式であるため流動性に懸念がなくはない。

日本との貿易関係や多くの日本企業が進出していることを考えれば、隣国が混乱すれば日本にも悪影響が及ぶ。そのことも踏まえて、再締結の是非を考える必要があるだろう。

(※1)外貨準備高、対外短期債務残高、財・サービス輸入金額ともに出所は韓国銀行。

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神尾 篤史

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