ジャパンウェイ

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2015年12月03日

  • 木村 浩一

ラグビーのワールドカップを1987年の第1回から見ている者にとって、ラグビーの世界で南半球のチームの強さは圧倒的である。今年のワールドカップで日本チームが対南アフリカ戦で成し遂げた快挙は長年のファンにとっては奇跡としか言いようがなく、日本ラグビーフットボール協会前会長で東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森会長の「夢ならば覚めてほしくない」という発言も、強く共感するところである。

日本チームの勝利の要因は、エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチが提唱した「ジャパンウェイ」にあるだろう。外国人選手と比べ体格の劣る日本人が海外の強豪に立ち向かっていくには、日本人の長所と短所を分析し、長所を伸ばし短所をプラスに変えていく練習と、世界のチームや審判などを分析した上で立案した戦略、戦術の実行が必要で、それが世界を驚かす結果を生み出した。

日本人は、縄文時代以来、村人とともに協力しながら農作業をしてきた民族である。古来、個々人の突破力ではなく地域の人々との共同作業の中で生きてきた日本人は、農業人口が少数になった現代においても、日々の生活や家庭のしつけの中で、お互いに協力しながら生きていくメンタリティーを連綿として受け継いでいる。

欧米人のように強く自己主張できるよう日本人が変わらなければ、国際化が進む世界の中で日本は生きていけないという主張が多い。しかし、他人に迷惑を掛けない、共同作業の中で円滑な人間関係を築いていくことなど、他人との協調の中で生きてきた多くの日本人にとっては、困難な生き方である。

エディー・ジャパンは、外国と同じ戦略、戦術で戦う必要はなく、自己の強みを生かし的確な戦略をもって臨めば、日本人も国際舞台で十分に伍していけることを示した。

ジャパンウェイによりラグビーファンとして心酔いしれた今秋になったが、ラグビー以外でも、経済、政治、科学の世界でジャパンウェイは通用するのではないだろうか。

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