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企業への政府の注文は"筋違い"か?

2015年10月23日

調査本部 執行役員 調査本部副本部長 兼 金融調査部長 保志 泰

政府において、「未来投資に向けた官民対話」と題した会合が開かれた。安倍政権の“新三本の矢”の柱のひとつ「強い経済」を実現するために、企業の積極的な投資を促すべく、対話をしていこうという趣旨である。必ずしも政府が一方的に企業の経営に注文を付けているわけではないが、企業経営者からみれば、政府による経営への介入のようで、あまり心地の良いものとは言えないだろう。「笛吹けど踊らず」にならないか懸念される。

今回のように、企業の経営に対して注文を付けるような政府の行動が、最近目立ってきたように思われる。9月には、携帯電話料金に関して、安倍首相自ら値下げ要請を行ったばかりであるほか、少し遡れば、企業に対する賃上げの要請が、昨年あたりから繰り返されている。

政府の立場に立てば、金融政策や財政政策など政府・中央銀行のとるべきマクロ政策で一定の結果を出しているにもかかわらず、企業の行動変化が起きないため、期待していたような“トリクルダウン”(滴り落ちる)効果の実現が見えてこない。フラストレーションが溜まっているに違いない。

一方で、企業の側から見れば、現状のマクロ環境、あるいは将来予想される環境を前提とする合理的な判断に基づいて投資の決定や賃金設定、あるいは販売料金設定を行っているわけであり、政府からとやかく言われるのは心外と感じるのは当然だろう。政府がすべきは、現状の事業環境や、将来の期待を変えるようなマクロ政策や規制改革であり、そこが変化すれば、自分たちの行動も自ずと変わるだろうという主張が聞こえてきそうだ。

戦後の高度成長期においては、政府主導の産業政策が幅を利かせていたが、日本の産業・企業のグローバル化が進む中で、意味をなさなくなった。しかし、日本の少子高齢化が進行する中で、国内市場の先行きに不安を抱えて企業が国内投資を怠れば、企業自らの存立基盤をも、スパイラル的に揺るがしかねない。

株式会社である企業の行動は、本来は株主を中心とした利害が大きく影響する。つまり、日本経済全体の発展が株主の利害と一致すれば、政府の主張とも合致することになる。ガバナンス改革を推進している政府としては、企業経営者に注文を付けるよりも、株主の利害との一致点を見出して働きかけを行うのが、本筋というものかもしれない。

その意味では、近年の外国人保有比率の上昇は、それを困難にさせる傾向と言えなくもない。ここは、個人を中心とする日本人投資家の育成に取り組むべきではないか。とくに、将来の日本と共に生きる若い世代の投資家層拡大が大きな鍵を握るかもしれない。長い目で見れば、そうした投資家層の厚みが増すことにより、企業も国内投資に目を向ける、もしくは、積極的に国内投資を行う企業が成長する、というシナリオが描けるのではないだろうか。

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保志 泰

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