ドローンとメイカーズ
2015年10月19日
少し気が早いが、今年の流行語大賞候補の一つは、何と言っても、「ドローン(無人航空機)」だろう。1月にはホワイトハウスでの落下事件が話題になったが、4月には日本でも首相官邸で発見されたことを契機に規制論議が活発化し、9月には航空法が改正されるに至った。
良くも悪くも一気に社会的な認知を得たドローンであるが、ドローンがこれ程メジャーな存在になる一つのきっかけになったのは、クリス・アンダーソンの『Makers — 21世紀の産業革命が始まる』(以下、『Makers』)の刊行であると筆者は思う。日本でも3年前に刊行され、3Dプリンターが注目を集めるきっかけにもなったあの本である(※1)。
『Makers』の中では、クリス・アンダーソンが趣味で作り始めた自動操縦機を、ネット上で公開し、コミュニティー(DIYドローンズ・ドットコム)を通して作っていったこと、そこを基盤に3Dロボティクスを起業したことが、一つのエピソードとして紹介されていたのであった。当時はまだまだニッチな存在だったものが、この3年間で様変わりしてしまったことに、変化の速さを実感した。
『Makers』のメッセージの一つは、ビットの世界で起きたことはアトムの世界でも起きるということだった。換言すれば、ウェブの世界で起きたことは、モノの世界でも起きるということだった。
ドローンの例で言えば、企画・開発・調達・製造・流通・使用のあらゆる局面でネットやコミュニティーが大きな役割を果たしていると言える。また、ドローンの使用により得られたデジタル・データがオープンあるいはクローズドなネットに流入し、活用されるという循環が生まれてきている。逆に言えば、こうした循環があるからこそ、アイデアから起業までのハードルが低くなり、小回りが利く小さな組織が活躍でき、短期間で爆発的な成長が可能なのだと言える。
企業にとっては、これは一つの機会でもある。あれこれ考える前に、メイカーズフェア等のイベントに足を運んでみるのも一考である。
(※1)筆者も当時この本の意義について論じている。吉村 浩志「メイカームーブメントともの作り」(2012年11月14日)
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マネジメントコンサルティング部
主席コンサルタント 吉村 浩志
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