「男性の子育て」支援を後押しするもの

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2015年09月29日

  • 大川 穣

男性の育児参加のベンチマークともいえる育児休暇取得率は、厚生労働省の雇用均等基本調査によれば、平成26年度では2.30%となっている。「イクメンブーム」の到来により、子育てに積極的な男性が増えたイメージはあるが、女性に頼る構図は変わっていない。

そんな筆者も1歳の娘をもつ父親である。共働き世帯であって、育児休暇を取得したことはなく、子どもを世話する時間は圧倒的に妻より劣る。平日の退社後と土日の終日に子どもと向き合っている。そんな我が家ではあるが、8月中旬に妻が突然入院することとなり、その間に約2週間1人で家事育児をまわすことになった。

妻が退院するまでの間は、離乳食の調理と食事、オムツ替えや夜中の寝かし付けといった娘の世話に加え、その合間に家事や買い物をこなすこととなった。保育園の帰りに娘を連れて病院に見舞いに行く頃には、あっという間に1日は終わってしまう。娘は子どもながらも母親がいない状況を理解しているらしく、いつもは妻にべったりであるが、必死に甘え遊びを求めてくる。これまで以上に父親としての責任を強く感じると同時に、普段妻がどんな思いで娘と接してきたか、娘を通して感じ取れるのである。

幸いにも妻の入院期間と筆者の夏季休暇の一部が重なったこともあり、勤務形態を変えるには至らなかった。しかし、夫が責任をもって育児を担っていくには、不測の事態にも備えられるよう、仕事との兼ね合いや調整をどうつけていくか、働き方と勤務時間の管理は必須である。日頃から働き方の見直しをかけておく必要があると思うのである。

企業の多くは子育てを支援する取り組みを導入し、育児を支援する制度は確実に整備されつつある。これまでは企業が働き方を決めて、これが風土となって従業員もこれに倣うことが必然だったかもしれない。しかし、企業の経営としての視点からも、ビジネス機会の創出、生産性の向上、雇用・就労形態の多様化、ワーク・ライフ・バランスの適正化などが期待できると捉え、従業員自身が働き方を決める取り組みが進んでいる。そんな大きな流れの中に育児休暇制度は位置づけられる。

職場では制度が整えられ、世の中の働き方が大きく変わろうとする中、企業の経営としては、強い意志とビジョンをもって将来従業員にどんな働き方を望み、それが経営のイノベーションとなってどれほどのインパクトを与えていくかは経営課題である。一方で、経営と従業員との間で活発なコミュニケーションが図られ、職場全体に浸透されるまでには至っていないのではないかと思われる。父親が整備された制度を有効に活用できるかどうかは、企業に属しながらも父親自身が働き方をデザインできるかどうかにかかっている。

日本における男性の育児参加はまさにスタートしたばかりだ。現役の子育て世代は将来マネジメントを担っていく人材であり、彼らが率先して育児休暇を取得することが日本の子育て支援を後押しするはずだ。

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