M&Aにおける企業価値評価
2015年07月13日
アベノミクスの影響もあってか、新聞紙上で、M&A関連記事を目にすることが多くなった。M&Aは、日本企業にとって、以前より身近になったようだ。
ただ、M&Aについて、なんとなくわかるものの、実態がよくわからないと考える人が多いかもしれない。本稿において、「M&A」・「企業価値評価」について、考えてみたい。
通常、M&Aは、次のようなステップを経る(株式取得で相対取引、基本条件合意後)。
- 基本合意書の締結
- 買手による各種デューデリジェンス(法務・会計・税務等)
- 買手及び売手による企業価値評価
- 交渉
- 株式譲渡契約書の締結
- 株券と現金の決済(クロージング)
秘密保持条項が含まれた基本合意書の締結後、通常、デューデリジェンス(DD)といわれる、ターゲット企業(売手)の調査が行われる。同じタイミングで、買手及び売手双方が、企業の価値評価を行う。そして、譲渡価格・従業員の処遇等を含めた各種条件の交渉を行い、双方が納得すれば、契約が成立する。
上記ステップのうち、重要となる論点の一つが、③の企業価値評価である。
買手はより安く買おうとし、売手はより高く売ろうとするインセンティブが働くため、初期の交渉においては、売手の算出した企業価値が買手の出した企業価値を上回るのが一般的である。
企業価値評価には、主に3つの手法がある。
- コスト・アプローチ
- マーケット・アプローチ
- インカム・アプローチ
コスト・アプローチの代表的なものは、純資産価額法である。純資産価額法は、貸借対照表における純資産価額をベースに企業価値を算定する手法である。マーケット・アプローチの中で、類似会社比較法(マルチプル法)は、上場している類似会社のPERやPBR等を用いて、企業価値を算定する方法である。インカム・アプローチは、企業の収益をベースに企業価値を算出する手法で、DCF(Discounted Cash Flow)法等がある。
上記のように、いろいろな手法があるが、M&A実務で多く用いられているのが、DCF法である。DCF法は、企業が将来獲得するキャッシュを現在価値に割り戻して算定する。M&A実務においては、マネジメント・インタビューを行い、事業計画の蓋然性について、調査を行うケースが多い。
以上述べた、M&A実務や企業価値評価において、通常、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)が会社(買手又は売手)を支援する。M&Aは、一般の企業にとって、馴染みのある業務ではない。豊富な知識と経験を備えた、外部の独立した第三者機関であるFAの活用は、実務を円滑に進める上で、非常に有効な手段となる。
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- 執筆者紹介
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コーポレート・アドバイザリー部
主任コンサルタント 真木 和久
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