FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定

2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い

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2025年12月11日

  • 経済調査部 主任研究員 矢作 大祐
  • ニューヨークリサーチセンター 研究員(NY駐在) 藤原 翼

サマリー

◆2025年12月9日・10日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、3会合連続で0.25%ptの利下げが決定された。政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標レンジは3.75-4.00%から3.50-3.75%へと引き下げられた。市場は12月FOMCでの利下げを事前に織り込んでおり、サプライズはない。また、バランスシートの拡大を実施することも決定された。パウエルFRB議長によれば、当初の1カ月間で400億ドルの短期国債買入を実施し、数カ月間は高水準での買入を継続した後、買入額を減額する。短期金融市場が既にひっ迫していることや、4月中旬の納税日に準備預金が急激に減少する傾向にあることを踏まえた対応となる。

◆今回のFOMCでの最大の注目点は2026年の利下げペースだ。FOMC参加者のFF金利見通し(ドットチャート、中央値)では、2026年、2027年にそれぞれ0.25%ptの利下げ、2028年以降は据え置きとの見立てが示された。ただし、2026年以降の予想分布は大きくばらついており、景気・物価を巡る不透明感が依然として強いことを示唆している。

◆現時点で考えられる不透明感の主な源泉の一つはインフレ率だ。FOMC参加者はインフレ鈍化を見込むが、景気回復の下で関税コストの価格転嫁が進む可能性がある。他方、足元で国家緊急経済権限法(IEEPA)を根拠とした追加関税措置に関する最高裁での審議が行われている。IEEPAに基づいた追加関税措置が無効となった場合、インフレ圧力が軽減し、景気や雇用の下振れ時には追加的な利下げが容易になり得る。

◆また、AIの活用拡大などによるコストカットが雇用抑制につながる可能性もある。景気が底堅く推移すれば、コストカットによる雇用抑制分が他の業種などの採用増によって吸収され得るが、景気が下振れした際には失業率が上昇しやすくなる。雇用環境が更なる利下げを要請するような局面も想定され得るだろう。こうした景気・物価を巡る不透明感に加え、2026年はFRBの議長交代というタイミングも重なる。ドットチャートが示す2026年の0.25%pt利下げを前提視するのには慎重であるべきだろう。

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