サマリー
◆本稿では、足元で見られる長期金利上昇と円安の同時進行の背景を整理し、先行きの財政・金融政策への示唆を見出す。
◆【長期金利上昇と円安の背景】日本経済が供給制約に直面する中、政府が積極財政の姿勢を示したことで、国債需給の緩和や物価の大幅な上昇等への懸念が強まった。これが「タームプレミアム」を押し上げることで長期金利が上昇した。他方、「リスク中立金利」は概ね横ばいであり、政策金利の上昇幅は限定的との見方が広まっている。物価上昇への懸念と併せて、利上げ幅が限定的という予想が急速な円安をもたらした。
◆【「ビハインド・ザ・カーブ」のリスク】当社の試算では、ドル円レートが165円/ドルを超えると、企業の価格転嫁行動が急激に積極化し、円安による物価の押し上げ効果は大きくなる。165(170)円/ドルで推移した場合、26年の生鮮食品及びエネルギーを除くCPI上昇率は+0.41(0.63)%pt押し上げられる。今後更なる物価高対策が講じられれば円安が一段と助長される可能性がある。この悪循環に陥れば、金融引き締めが遅れ物価上昇に歯止めが利かなくなる「ビハインド・ザ・カーブ」のリスクが高まる。
◆【財政・金融政策への示唆】財政政策面では、需要喚起策を控え、歳出の抑制により国債発行依存度を低下させることが望ましい。これにより「タームプレミアム」の上昇を抑制できるだけでなく、上述の悪循環に陥るリスクを低下させることができる。金融政策面では、インフレ率の高まりに応じて利上げを進める姿勢を示すことが重要だ。これによりインフレ期待の低下を通じて「タームプレミアム」を抑制できることに加え、円安圧力を緩和することもできる。
◆【12月金融政策決定会合のポイント】12月会合で利上げに踏み切ったとしても、その後の利上げ姿勢も併せて示されなければ、「利上げ打ち止め」との思惑から為替レートがむしろ円安方向に動く可能性もある。政策金利を中立金利に近づけていくことで、円安進行で物価上昇圧力が一段と強まるリスクを回避することが適当であろう。
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