2015年04月17日
新年度が始まった。毎年4月になると、長い間会社勤めをしてきた筆者ですら、多少緊張する。他の部署から異動していらした方、中途で入社された方など新しい方をお迎えし、とても新鮮な気分になる。この新しい出会いがどのようなケミストリーを生み出すのか、想像を重ねてみる。
しかし、忘れてはならないのは当然ながら新入社員の方々である。長い学生生活に別れを告げて、社会人1年生として入社されるわけであるが、会社と学校とでは勝手がかなり違う。筆者の入社当時の心境を思い出すと、正直言って恥ずかしい限りであるが、「毎朝起きることができるか」が最大の悩みというか恐怖であった。当時は大学の授業への出席についても現在ほど厳しくなく、それをいいことに午前中はほとんど活動停止状態であり、午後からは体育会での活動を中心に生活サイクルが回っていた。そんな筆者が、朝が早いことで有名な証券会社に入社したわけだから、その恐怖は想像に難くないだろう。それでも、何とか朝が早い生活に慣れてきた。恐怖を徐々に克服してきたのである。
毎年3月、公益財団法人 日本生産性本部はその年の新入社員のタイプについてプレスリリースを発表する。今年の新入社員のタイプは「消せるボールペン型」だそうだ。日本生産性本部の説明によると、「見かけはありきたりなボールペンだが、その機能は大きく異なっている。見かけだけで判断して、書き直しができる機能(変化に対応できる柔軟性)を活用しなければもったいない。ただ注意も必要。不用意に熱を入れる(熱血指導する)と、色(個性)が消えてしまったり、使い勝手の良さから酷使しすぎると、インクが切れてしまう(離職してしまう)。」(※1)ということだそうだ。また、「本年入社の大卒新入社員は、現役生であれば、東日本大震災の直後に大学に入学している。高校の卒業式がまさにその当日だったり、大学の開講日がゴールデンウィーク後になったりといった体験をした。また大学卒業の直前にフランスでテロ事件が起きたため、卒業旅行の行き先を変更したといった話も聞く。こうした様々な状況変化に対応してきた世代である。」(※2)とも説明している。
今年の新入社員は、様々な想定外の外部環境の変化に対応し、柔軟性を発揮してきたタフな横顔を持つ模様であり、これからの日本経済の改革に必要不可欠な人材を今後輩出することになるのかもしれない。
今の日本経済は少し穏やかな様相を呈してはいる。しかし、各国金融政策の舵取りのゆくえ、東欧・中東における地政学的リスク、新興国の経済状況の変化など外部環境はまだまだ先が見通しにくい。さらに、国内では社会保障、財政、雇用、貧困などなど多くの問題が山積している。こうした厳しい環境のなか、企業の稼ぐ力の強化に熱い視線が注がれるのは無理もない。稼ぐ力を強くするには、外部環境の変化にどれだけ柔軟に対応できるのか、それをうまく活用できるのかが鍵となることは言うまでもない。まさに今年の新入社員のようなタイプが今社会に求められているわけである。
ちなみに、筆者が入社した当時は、現代コミュニケーション・センターが新入社員のタイプを命名・発表していたが、その年の新入社員のタイプは「使い捨てカイロ型」で、「もまないと熱くならず、扱い方もむずかしい」という内容だった。これを聞いて少しさびしい気持ちがしたことを覚えているが、当時を振り返るとそんな新人時代だったかもしれない。
今年の新入社員の方々とどのようなケミストリーを起こせるのか。今から楽しみだ。
(※1、※2)出典:公益財団法人 日本生産性本部
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