2.5次元ビジネス

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2015年04月13日

  • 間所 健司

経済産業省が2015年3月に公表した「クールジャパン政策について」によると、本政策のねらいは日本の文化やライフスタイルの魅力を付加価値に変え、経済成長につなげることにある。この日本の文化やライフスタイルに、マンガやアニメ、音楽といったコンテンツが含まれている。

このコンテンツの世界で、最近「2.5次元ミュージカル」が人気を集めている。「2.5次元」、聞きなれない言葉と感じる人も多いであろう。2014年3月に設立された一般社団法人日本2.5次元ミュージカル協会のパンフレットによると、2.5次元ミュージカルとは、「2次元で描かれた漫画・アニメ・ゲームなどの世界を舞台コンテンツとしてショー化したものの総称」とある。

これまで2次元コンテンツの世界では、漫画⇒映像(アニメ、ゲーム、映画)や、小説(ライトノベル)⇒漫画(コミカライズ)⇒映像(アニメ、ゲーム、映画)、漫画⇒小説(ノベライズ)などのワンソースマルチユース、クロスメディアといった戦略が採られてきた。つまり、これまでの2次元コンテンツは2次元の中でのみ形を変えて多用途化されてきたものである。2.5次元の世界ではさらにそれを拡大し、舞台ミュージカルへと進化させてきたものであるといえよう。特に日本のマンガ、アニメ等は娯楽性、ストーリー性が高いためミュージカルにし易い点もあろう。

2.5次元ミュージカルの先駆けであったのが、1970年代に初演された宝塚歌劇団における最大のヒットといわれている「ベルサイユのばら」である。その原作は池田理代子氏の漫画「ベルサイユのばら」であった。当時は2.5次元ミュージカルという言葉はなかったが、日本2.5次元ミュージカル協会の定義に合致する(同協会のパンフレットでも誕生期に「ベルサイユのばら」が記載されている。)。宝塚歌劇団では最近「ルパン三世—王妃の首飾りを追え!—」が上演されたことも記憶に新しい。

2000年以降になると、ミュージカル「テニスの王子様」、通称「テニミュ」が先鞭をきる形で、次々とマンガ、アニメ、ゲームがミュージカル化されてきた。2010年には40万人ほどであったマーケットが、2013年は160万人の観客を動員したそうである。それを受けて、2.5次元ミュージカル専用劇場として、東京・渋谷にアイア2.5シアタートーキョーがスタートした。

日本のマンガ、アニメが世界で成功してきたように、2.5次元ミュージカルも世界に飛躍していくことに期待したい。今後はビジネスとしても2.5次元ミュージカルから目が離せなくなりそうだ。

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