あなたは、テレビを観ながら洗濯物を畳めるか?

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2015年04月09日

  • 河口 真理子

少し前のことだが、自宅でテレビを観ている時に、私宛てに電話がかかってくると何故か夫はテレビを消してしまっていた。また彼が料理とか簡単な作業をしている時に話しかけると「今料理中【作業中】だから話しかけないで」と拒否されたものだ。なんで人がせっかく観ているテレビを消すのか、会話を拒否するのか、喧嘩を売っているのか!とむかついていた。しかし、話を聞いてみると、彼はテレビがついていたら電話で話ができないだろうから、という親切心で消してくれていたらしいし、料理中は本当に話ができないらしい。

自分はテレビを観ながら電話は当たり前にできるし、黙って料理するよりワイワイ世間話しながらの方が楽しいと思っているので、「そのような簡単なことができないなんて、どこかおかしいのじゃないか」とも思っていたものだ。しかしそれはどうも誤解だったようだ。『話を聞かない男、地図が読めない女』(※1)という脳学者の本によると、脳には男脳と女脳があるという。女脳はマルチタスク脳で一度に複数のことができる、男脳はシングルタスク脳で一時に一つのことしかできないという。大昔の狩猟採集時代、男性は狩りに出かけ、女性は集落の周りで木の実を拾いつつも子育てをしていた。男性は獲物を狩る能力が発達したため、一つのことに集中する脳が発達し、女性は足元でウロチョロする子供の面倒を見つつ、木の実や食糧を探したり家事をするので、同時に複数のことができる脳になったという。実際に右脳と左脳を結ぶ脳梁は女性の方が太いといわれており、一時に多くの情報が処理できるのだそうだ。

それは本当なのか?そこで周囲の男性に「テレビを観ながら洗濯物を畳めるか」を聞いてみたところ、ほぼ半分はダメだそうだ。「気が付いたら手が止まっていて奥さんによく怒られる」という人もいた。普通に畳めるというのは1割程度か。残りは「洗濯物を畳んだことがないから、わからない」という論外な答えだった。職場でもパソコンを打っている最中の人に話しかけると、よっぽど複雑なことでなければ、女性は受け答えしつつも手を止めないが、男性の場合は打つ手を止めることが多い。

家事でも仕事でも単純な作業であればマルチタスクの方が効率は良いはずだ。そして、1割程度の男性は畳めるらしいので、それは鍛えればどうにかなる程度のことだろうと思い、シングルタスク脳の息子をトレーニングすることにした。何をしたかというと、息子が夜テレビを観る際には洗濯物を畳むことを条件にした。そうしたらすんなり畳めるようになった。最近では、テレビを観る際は何かを同時にやっていることが多いようだ。これがテレビ以外にも応用が利くのか、単にテレビを観ながらの「ながら族」になっただけなのか、まだはっきりしないが、少なくともテレビがついていると手が動かない夫よりはマルチタスクの能力が育っているようだ。

男の子のお母さんにはこのトレーニングはお勧めしたい。息子のマルチタスク脳を鍛えるだけでなく、母親が洗濯物を畳む手間が省ける。また女性の下着を畳むことに抵抗のある男性が多いらしいが、子供のうちから鍛えればそういう抵抗もないので、将来のお嫁さん(もし来てくれれば)に感謝されるはずだ。

(※1)アラン・ピーズ、バーバラ・ピーズ著、藤井留美訳、主婦の友社、2000年

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