独立社外取締役の独立性基準はどう作るか
2015年03月03日
現在検討が進められているコーポレートガバナンス・コードによって、独立社外取締役を2名以上選任することが上場企業には求められるようになる。会社法では、最低一名の社外取締役選任を強く求めているが、コーポレートガバナンス・コードでは、単なる社外ではなく独立社外と言っている点でハードルは上げられているし、複数選任が求められる。現任の社外監査役に加えて、独立社外取締役を新たに選任すれば、上場企業における社外役員の数は一気に増えることになり、候補者の選定も難しくなるかもしれない。
この独立社外取締役の独立性を判断するための基準は、各社が策定・開示すべきとされている。既にこうした基準を策定済みの企業もあるのだが、策定するための検討を始めたばかりだという企業も多いし、全く手についていない企業もあろう。この独立性判断基準をあまりにも厳格にしすぎれば候補者の数が限られてしまう恐れも生じよう。かといって、緩い基準を作ると独立性自体が疑わしくなる。発行済み株式の一定割合以上を保有する大株主の関係者や、取引高が一定割合以上の企業の関係者に独立性を認めないなどの基準を策定する事例も見られるが、数値基準を設けない例もあり、各社で様々な工夫が行われているところである。
コーポレートガバナンス・コードへの対応策としては、まず、監査等委員会設置会社への移行があるだろう。監査等委員会設置会社では、監査役、監査役会が設置されず、その代わり、3名以上(過半数は社外取締役)の「監査等委員である取締役」によって構成される監査等委員会が設置される。監査役会設置会社のままであれば、会社法上社外監査役2名以上が必須であり、コーポレートガバナンス・コードによって独立社外取締役2名以上が求められ、合計4名の社外者が必要になる。これに比べれば監査等委員会設置会社では、2名の社外者で足りる。現在の社外監査役を独立社外取締役とすることができれば、追加選任なしにコーポレートガバナンス・コードへの対応が可能になる。
また、独立性判断基準を弾力的なものにするという対応も考えられる。社外取締役の独立性を判断するのに、数値基準などで機械的に評価することが好ましいとは限らない。様々な事情を総合的に勘案して、独立社外取締役として適任であると判断できればいいのであるから、東証の基準を踏まえながら考慮の余地を多く残す独立性判断基準を作るということを考えてもいいのではないだろうか。
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