政府の正味資産はプラスに回復したが

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2015年02月06日

  • 大和総研 顧問 岡野 進

2013年度国民経済計算確報のストック編が1月16日に発表された。今回の統計で、おやっと思ったのは、一般政府部門の正味資産(バランスシート上の純資産とほぼ同義)が再びプラスに回復したことである。一般政府部門の正味資産は2010年末までプラスであったが、大幅な財政赤字が続いていることが主因で2011年末に▲17.6兆円に転落、2012年末はさらにマイナスが拡大して▲41.9兆円になっていた。それが2013年末は3,719億円とわずかながらプラスに転じた。大幅な財政赤字が続いているわけであるから実際の資金フローは大幅なマイナスであり、正味資産がプラスに転じた要因は資産の再評価によるものだった。

一般政府の資産の再評価額は79.8兆円のプラスであった。負債は8.0兆円のマイナス(負債増加)であり、差引71.8兆円のプラスとなった。中身は政府の保有する株式など金融資産の価格が上昇した効果である。これはこれで政府の財政状態に良い影響を及ぼしたわけだが、同規模の再評価益が続いていくということは考えにくく、一時的な効果とみるべきであろう。

一般政府全体を、中央政府(国)、地方政府(地方公共団体など)、社会保障基金(公的年金など)の3部門に分けてみることができる。残念ながら、生産資産(建築物や在庫など)についてのデータが部門ごとに分けられていないので、それぞれの正味資産の数値はないが、将来の支払い分が貯蓄されている社会保障基金が大きな黒字であることは確かだ。これが、中央政府、地方政府の大幅な赤字を補てんした格好になっている。公的年金は積立方式ではないので正確に計算できないが、仮に将来の年金支払いのおおよその額を現在価値に換算して負債と認識すれば、社会保障基金も大幅な黒字というわけにはいかないだろう。やはりバランスシート的にも財政問題は深刻である。

一方で、政府債務総額がGDPの2倍を超えると言われると、借金のほうばかりが強調されて、とても返済不可能なのではないかというイメージになりやすい。しかし、バランスシート的に健全な国家財政状態というのは、資産があり負債もあるが、正味資産が均衡し持続可能であればよいので、今からフローの財政赤字状態を立ち直らせていければ、財政健全化は全く不可能な夢というわけではない。対外純資産が大幅プラスである日本は資産の面に注目して税収を確保する道がある。政府は夏までに財政健全化計画を発表するという。ぜひとも実効性のあるプランを示していただきたいと思う。

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