中国の自動車販売もニューノーマル(新常態)へ移行か?
2015年01月21日
ニューノーマル(新常態)は、2014年の中国の経済分野で最も注目されたキーワードであろう。
2014年12月9日~11日に北京で開催された中央経済工作会議は、2015年の経済運営を協議し、ここでもニューノーマルに適応することの重要性が繰り返し指摘された。具体的には、(1)経済成長は、高速成長から、中高速成長へ、(2)経済発展パターンは、規模拡大と速さ重視の粗放型発展から、質と効率を重視した集約型発展へ、(3)経済構造は、規模拡大・能力増強から、ストックの調整へ、(4)経済発展の牽引役は、伝統的な成長リード役から、新たな成長リード役へ、と移行していくことが表明されている。
このように、ニューノーマルは、経済構造の高度化や質的向上を内包する、前向きな話であるはずだが、上記(1)の側面が強調され、低めの成長率や増加率を正当化するための言い訳に使われることがある。その典型が自動車販売の伸び率鈍化ではないか。
中国自動車工業協会によると、2014年の自動車販売は、前年比6.9%増の2,349万台となり、2013年の同13.9%増から伸びが鈍化した。同協会は、2015年は同7%増程度と予想している。2013年末時点の都市100世帯当たり自動車保有台数は16.9台にすぎないこと、持続的な所得増加により自動車購入層が順調に拡大していることから、自動車購入の「高速増加」が続いてもおかしくないにもかかわらずである。
足元の景気減速や習近平総書記が主導する綱紀粛正の影響は当然あろうが、それだけではない。すさまじい交通渋滞や大気汚染への対応策として、自動車購入制限を導入する都市が増えているのである。2013年以降では、天津市は年間10万台(購入制限導入前は30万台)、浙江省杭州市は同8万台(同30万台)、広東省深圳市は同10万台(同55万台)と、かなり厳しい購入制限が導入されている。さらにこうした動きは今後さらに広がりかねない。導入の可能性が報道されている都市だけでも、陝西省西安市、山西省太原市、湖北省武漢市、重慶市、河北省石家荘市、四川省成都市、山東省青島市など枚挙にいとまがない。
自動車購入制限は、新規購入に限定され、ナンバープレートを所持している買い替えには適用されないので、既に自動車の普及が相当程度進んでいる大都市については、影響は限定的かもしれない。しかし、それ以外の都市では、初めての自動車購入需要が大きく抑制される可能性が高い。
購入制限による自動車販売の伸び鈍化は、決してニューノーマルではない。より効率的な道路交通システムの整備や通勤のための軌道鉄道・地下鉄の一段の整備、さらには通勤に自家用車を使わない社会意識の変革こそが、求められているのではないか。
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調査本部
主席研究員 齋藤 尚登
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