スクランブル交差点でみた光景
2015年01月07日
2014年の年間訪日外客数は、初めて1,000万人を突破した2013年から約3割増加して、1,300万人を上回る勢いである。アベノミクスが成長戦略で掲げるさまざまな数値目標の中で、訪日外国人旅行者数(2020年に2,000万人、2030年に3,000万人)は順調に進捗している数少ない施策になっている。
外国人旅行者が日本国内で消費する分は、当然ながら、日本経済にとってプラスに寄与する。観光庁が発表する「訪日外国人消費動向調査」によると、2014年7-9月期の旅行消費額(速報値)は5,505億円、前年同期比で41.2%増となり、7-9月期までの累計額で2013年全体を超えたという。旅行者数の増加ペースを上回っており、それだけ旅行者一人ひとりに多くのお金を落としていただいている計算となる。
言うまでもなく、外国人旅行者の大幅増や彼らの旺盛な支出意欲に貢献しているのが円安傾向の継続であり、昨年10月末以降の再加速によって、今年も追い風になると期待されよう。特に、アジア各国の通貨は、米ドルと比べても対円の増価程度が大きくなっているケースが多い。今日本に行かなければ損、買い物をしなければ損ということになるだろう。円高局面において、日本人旅行客が海外でブランド品等の支出に貪欲だった現象の逆バージョンだと思えばいい。ちなみに、2014年の出国日本人数は2年連続で前年割れになるとみられ、1,700万人に届かない可能性が高い。
一方、観光庁の「宿泊旅行統計調査」で都道府県別の外国人延べ宿泊者数をみると、東京圏(東京都、埼玉県、千葉県及び神奈川県)で全体の4割弱(東京都だけで約3割)と寡占化しており、地域格差があるといえよう。これは、成田空港と羽田空港から入国した外国人が全体の約半分を占めることからも裏付けられる。つまり、旅行者は、限られた入口から入ってきて、偏った地域に滞在して(お金を使って)帰っていくわけである。
安倍政権は、年末に閣議決定した「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中で、東京圏への人口集中度約3割が少子化、人口減少につながっているとして、「東京一極集中」の是正を大きく打ち出した。ただ、職が人を引き付けるという原則に従えば、外国人旅行者の分散化を図ることも一つのポイントになるだろう。
このような珍しくもないテーマで執筆したのは、年末年始に出歩いた際に改めて外国人旅行者の多さを感じたからに他ならない。確かに、オフィスのある東京駅周辺でみかけることは珍しい情景ではなくなったし、電車の中も然り。渋谷のスクランブル交差点のぶつかりそうでぶつからない、混沌とした人の流れもいつもと変わらなかった。ただ、外国人旅行者の、交差点を渡らずに人の流れをカメラに納めようとする姿、あるいは、ビデオを回しながら交差点を渡っていく姿があった。35年以上も見慣れた、日常的な光景が観光スポットになる不思議さが新鮮だったが、NYのタイムズスクエアにも劣らないこのような場を地方に期待するのは難しいかもしれない。
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