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地方創生と同時に必要なこと

2014年12月03日

経済調査部 主任研究員 溝端 幹雄

アベノミクスの中間評価との位置付けで、現在、衆院選が展開されている。第二次安倍政権では農業や医療などの岩盤規制の改革が注目を浴びたが、どこまで実効性を伴った改革内容となるのかは、今後、予断を許さない。

現在、議論されている地方創生においても規制改革は重要であり、企業の市場への新規参入や退出を自由にさせることで、競争を促して産業の新陳代謝を高めなければならない。また、競争を通じて創造的な仕事を生み出す環境を作り出し、さらにTPPでも議論されているように知的所有権の適切な設定を行うことで、今後必要とされる知的資産への投資を促すことができる。

ただし、規制改革は規制緩和とは必ずしも同義ではないことに注意したい。規制を緩めることで市場への参入退出を促すことは望ましいが、それによって不正な取引が市場で蔓延し、人々が安心して取引ができなくなれば、それは逆効果である。よく知らない相手でも安心して取引ができる市場環境を作ることは、規制改革の必要条件である。

そのためには、情報開示の徹底と、取引の信頼感を高める市場監視体制の強化が必要である。その意味において規制は強化されるべきであり、だから規制“改革”なのだ。これまで規制とは消費者に対する一種の安全装置でもあった。情報不足で判断力を欠く消費者に不利益を与えないように行政側が配慮している側面があった。しかし、情報を獲得する手段が多様化して情報が入手しやすくなる一方で、一律の消費者保護には企業の創意工夫を妨げるデメリットもある。その代わりに、生産者側の情報開示を徹底させることで、自分に不利益かどうかを消費者側に判断させる方向にシフトしている。

もちろん、明らかに不利益をもたらす取引は消費者庁や公正取引委員会といった行政側の判断で取引をやめさせる仕組みは一層充実させるべきだが、情報開示を徹底させる以上、消費者の自己判断の領域が拡大していることは間違いなく、消費者も他人任せではなく、情報開示によって得られた情報を自分で分析できる判断力もやはり必要だ。自分の身は自分で守る、個人の自立した判断力がこれまで以上に求められる時代になったのである。

自立した判断力には大局的かつ科学的な見方が求められるが、日本人にはこうした判断が苦手なところがある。将来を担う子ども達はもちろんのこと、むしろ大人こそこうした見方を謙虚に学ぶ必要があるだろう。地方創生では地域の主体的な構造改革に主眼が置かれているが、それと同時に、人々に独立の気概を促していくことも、超少子高齢社会が加速する日本が世界の中で存在感を発揮していくためには必要ではないだろうか。

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溝端 幹雄

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