1. トップ
  2. レポート・コラム
  3. コラム
  4. 中国に向かった世界のマネー

中国に向かった世界のマネー

2014年11月25日

政策調査部 主任研究員 神尾 篤史

世界のマネーフローがどのようになっているのか?投資家や金融系の会社に勤める人々などは多大な興味を持っているのではないだろうか。しかし、この全容を把握することはなかなか難しい。ただし、一部であればこの内容を示すことが可能であると思われる。このコラムでは、世界のマネーの動きの一部をBIS(国際決済銀行)の国際与信残高統計を用いて、見ていきたい。

この国際与信残高統計は世界31ヶ国・地域の銀行の国際与信残高を相手国・地域別に見たものであり(※1)、各国・地域の銀行がどの国・地域にどれだけ与信(※2)を行っているかを把握することができ、世界のマネーフローを見るには有用な統計である。

世界金融危機(2008年)から足元(2014年4月~6月)まで国際与信の動向を与信受入側と与信側(銀行側)から見ると、以下の4点を指摘できる。

(与信受入側)

  • 地域別にみると、先進国向け与信は金融危機前の水準を回復できていないが、新興国・地域向け(※3)、オフショア向け(※4)は金融危機前の水準を上回る。
  • 先進国向け与信では米国向けや日本向けよりも、欧州先進国向けの減少幅が大きい。
  • 新興国・地域向け与信ではアジア大洋州向けが金融危機前を大きく上回る。その主な要因は中国向けの増加である。オフショア向けでは、ケイマン諸島、香港、シンガポールの合計がオフショア全体の83%を占め、いずれも金融危機前の与信残高を上回る。

(与信側(銀行側))

  • 金融危機後、欧州の銀行は与信を大幅に減少させ、それを邦銀と米銀が補う状況にある。例えば、欧州の銀行は欧州先進国向け与信を減少させたが、邦銀は欧州先進国向けを僅かに増加、米銀は明確に増加させている。

上記の点で興味深いことはオフショア向け与信の増加である。香港、シンガポールは別だが、ケイマン諸島はタックスヘイブンとして多くの企業が法人登録のみを行い、実際の企業活動は別の場所で行っている。

ケイマン諸島に法人登録をする企業の役員等が実際に所在する国(≒企業が実際に活動する国)を見ると、中国と香港の企業が全体の8割を占める。香港とシンガポールについても同様に見ると、中国と香港の企業が全体の3割を占める。まとめると、オフショアに登録する企業の半数は中国と香港の企業になり、オフショア向け与信の大半が間接的に中国と香港の企業に向かっていると推測される。直接的な中国向け与信と合わせれば、世界金融危機から足元までの世界のマネーのおおよそ半分は、直接的、間接的(オフショアを通じて)に中国(含む香港)へ向かったと思われる。

10月に、米国ではFRBが量的緩和第3弾に伴う資産買い入れを終了させ、日本では日銀が量的・質的金融緩和の拡大を決定した。欧州ではECBによる量的緩和の導入が囁かれている。このような中で、今後も中国(含む香港)にマネーが流入するのか、注目していきたい。

(※1)BISの国際与信残高統計は所在地ベースと最終リスクベースに基づいた2つのデータが公表されている。本コラムでは後者のデータに基づいて話を進める。同基準は与信対象の物理的な所在地ではなく、「与信の最終的なリスクがどこに所在するのか」に基づいたものである。なお、最終リスクベースでデータを公表している国・地域は25である。
(※2)与信の定義は各国によって異なるが、貸出や債券投資などが含まれる。
(※3)新興国・地域向けはアジア大洋州新興国(中国、韓国、インド、ASEANなど)、欧州新興国(チェコ、ポーランド、ロシアなど)、ラテン・アメリカ新興国(アルゼンチン、ブラジル、メキシコなど)、アフリカ・中東新興国で構成される。
(※4)オフショア向けはケイマン諸島、香港、シンガポール、パナマなどで構成される。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

神尾 篤史

執筆者紹介
政策調査部
主任研究員 神尾 篤史