2014年10月08日
2014年になってロボットに関する話題が増えてきた印象がある。従来のロボットのイメージは、経済産業省のロボット政策研究会が発表した報告書(※1)での定義、「『センサ』、『知能・制御系』及び『駆動系』の3つの要素技術があるもの」であり、代表的なものは工場にある産業用ロボットになろう。2011年の世界の産業用ロボット(電子部品実装機除く)の世界市場規模は8,497百万米ドル、このうち日本企業のシェアは50.2%となっている(※2)。
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「NEDOロボット白書2014」(平成26年7月)での定義はわかりにくいが、「ロボットの役割」と題された図では、人の代替としての産業用ロボットの他に、自律性を持って危機環境下で作業を代行する無人システムや、人との共生や新しいメディアとしての日常生活支援を担うロボットが示されている。今後はこうした日常生活支援ロボットなどのサービスロボットの市場が拡大するとみられ、経済産業省の予測では、2035年に日本のロボット市場は9兆7,080億円になり、このうちサービス分野は4兆9,568億円と5割を超えるとしている(図表1)。
ロボット政策研究会の報告書では「『検索ロボット』は、RT(※3)の一部であっても、ロボットの定義から外れる一方、自動車や情報家電であっても、上記3要素を持つものはロボットの範疇に入り得る」としており、駆動系のないICTサービスはロボットの定義から外れる。しかし、最近のサービスロボット分野には、グーグル、アマゾン、ソフトバンクなどのICT企業の参入が相次いでいる。これらの企業の強みは、検索やお薦め商品の提示でお馴染みの利用者データの活用にある。いわゆるクラウド、ビッグデータといったキーワードが鍵となる知能・制御系の技術が重要な差別化要因となる。また、産業分野では建設機械(車両)の位置情報を活用して保守・車両管理、省エネ運転支援などを行うサービスが有名だが、サービス分野でも、加速度センサーや心拍数を測るセンサーなど、利用者や機器の行動・状況に関する情報を利用者が意識することなく収集できるセンサー技術が発達してきている。どのようなものでもデータとして扱われるようになるIoT(Internet of Things)時代の到来である。このためICT分野で起きている事象がロボット分野でも起きると考えてよいだろう。
ロボットといえばアシモフの「ロボット工学の三原則」(図表2)が有名だが、1950年に刊行された作品でもあり、IoTの影響は考慮されていない。第一条の「危害」は、直接、身体的な危害を与えることを想定しているだろうが、例えばロボット化した冷蔵庫がハッキングされて不適切に食料が保管されたことにより食中毒になることを「危害」といえるだろうか。第二条の「命令に服従」は、機械学習(※4)などによる人間が介在しない判断(命令)のことを想定していない。第三条の「自己を守らなければならない」は、駆動系ではないネットワークやクラウド上のデータも対象とする必要がある。IoT時代のロボットサービス三原則が求められよう。
(※1)経済産業省 「ロボット政策研究会中間報告書~ロボットで拓くビジネスフロンティア~」(平成17年5月)
(※2)経済産業省「2012年 ロボット産業の市場動向」(平成25年7月)
(※3) 筆者注:ロボット技術
(※4)「人間が言葉や常識を学習する過程を機械(コンピュータ)に再現させることによって、コンピュータがデータの中から知識やルールを自動的に獲得できるようにすること」(日経BP社「ITproまとめ『機械学習』」) 2014年9月24日閲覧
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小黒 由貴子