3Dプリンターの持つ秘めた可能性

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2014年08月11日

  • 菅谷 幸一

比較的最近になって、テレビや新聞、雑誌など、3Dプリンターに関する報道や特集などを目にすることが多くなったように思う。3Dプリンターというと、いわゆる「革命的開発」で、これまで個人ではなかなか簡単に作れなかったものがこれ1台で作れるようになる、というのが筆者の持つイメージであった。日本でも銃の製造・所持で逮捕される事件が現に報道されたときは、そのようなものまで作れるのか、と驚いた。何だか便利そうだが悪用されると恐ろしいもの、というように思っていた。

そのような印象を持つ中で、先日、3Dプリンターについて学ぶ機会があった。今回のコラムでは、その過程で興味深く感じた点について、雑感を交えつつ、触れてみたいと思う。

まず分かったこととして、盛り上がりを見せている3Dプリンターであるが、3Dプリンターのアウトプットの材料には限りがあり、実製品の製造に使える材料の種類は少ないという問題があることだ(※1)。3Dプリンターがあれば、さまざまな形状のものを作ることができるものの、材料の制約から何でも作れるというわけではないと言える。

ただ、その一方で、3Dプリンターで作れるものは、単に工業分野に留まらないということも分かった。そもそも3Dプリンターで作れるものといえば、例えば、フィギュアや、上述の事件にまで発展した銃など、工業製品のみと思っていたのだが、医療分野にも応用されており、義歯や人工骨など、ヒトの体の一部(に代替するもの)まで同技術により作ることができるということだ(※2)

さらに、こちらも近年注目を浴びている再生医療においても、3Dプリンターの基礎技術の活用が期待されているようだ。例えばiPS細胞を使って臓器を作るために、その臓器の形状を3Dプリンターで作るというものだ。この技術はまだ実現には至っていないものの、製作の試みがなされているようだ(※3)。素人考えながら、将来、再生医療分野とともに3Dプリンターが更なる進化を遂げた時、臓器をはじめ、あらゆる体の部位が再生可能になる日が来るのではないかと思う。

同技術の持つ可能性は想像以上に大きいのかもしれない。不安を覚えつつも期待が膨らむ。これからもその動向に注目していきたいと思う今日この頃である。

(※1)安齋正博「キーワードは『オーダーメイド』」(『月刊事業構想 2014年2月号』(株)日本ビジネス出版、2014年、P.22-23)

(※2)同上、P.23

(※3)安齋正博「積層造形技術の基礎、その期待と課題」(『先端加工技術 No.89』(財)先端加工機械技術振興協会、2013年、P.4)

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