FRBが「出口」に向かうと何が起きるのか?
2014年05月02日
黒田東彦日銀総裁が「異次元金融緩和」とも評される量的・質的金融緩和政策を導入してから1年余りが経過した。日銀の金融政策の効果などもあり、日本経済は徐々に明るさを取り戻してきた。
筆者は、2014年4月の消費税増税の影響はあくまで一時的なものに留まり、日本経済の拡大傾向が続くとみている。今後の日本経済は、①米国経済回復による輸出の持ち直し、②日銀の金融緩和を受けた円安・株高の進行、③消費税増税に伴う経済対策の効果などから、拡大が続く見通しである。
ただし、日本経済は4つのリスク要因を抱えている。具体的には、リスク要因として、①米国の中央銀行(FRB)が出口戦略を講じることに伴う悪影響、②中国の「シャドーバンキング」問題、③「欧州ソブリン危機」の再燃、④地政学的リスクを背景とする原油価格の高騰、の4点には留意が必要だ。
以下では、米国が出口戦略を講じることが、日本経済に与える影響などについて考察したい。
筆者は、米国が出口戦略を講じることは、日本経済にとってプラスとなる面の方が大きいと考えている。出口戦略が講じられれば、米国の長期金利は実体経済の回復を反映する形で緩やかに上昇していく可能性が高い。図表は米国の長期金利とTOPIXの推移を見たものである。両者はおおむね連動する形で推移している。
それでは、なぜ米国の長期金利と日本株が連動するのであろうか?
これには2つの理由がある。
第一の理由は、米国の長期金利上昇に伴い日米金利差が拡大することが、円安・ドル高要因になるからである。円安の進行は、日本企業の輸出金額の増加を後押しすることとなる。
第二の理由は、そもそも米国で長期金利が上昇する背景として、米国経済が強いケースが多いことである。米国経済が堅調に推移することは、わが国からの輸出全般を下支えする効果がある。
さらに、FRBが米国の実体経済の回復に即した形で、慎重な出口戦略を講ずることも、心強い材料である。FRBのイエレン議長は、実体経済の回復を注意深く確認しながら、緩やかに出口戦略を進めていくと表明している。
結論として、FRBが拙速な出口戦略を講じる結果、新興国を中心とするグローバルな金融市場や日本経済が大混乱に陥るリスクは限定的とみてよいだろう。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

- 執筆者紹介
-
副理事長 熊谷 亮丸
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
中国:消費低迷の深層・非正規雇用の急増
所得格差縮小は非持続的か。社会保障不安とリスキリングの難しさ
2026年08月10日
-
米雇用者数は減少、過去分も大幅に下方修正
2026年7月米雇用統計:失業率は低下も、労働参加率の低下に懸念
2026年08月10日
-
2026年4-6月期GDP(1次速報)予測(改訂版)~前期比年率+2.5%に下方修正
直近公表の基礎統計を踏まえ、個人消費と外需をそれぞれ下方修正
2026年08月10日
-
指名委員会等設置会社の見直しによる企業への影響
機関設計の選択にとどまらないガバナンスの実効性確保が重要
2026年08月10日
-
コーポレート・ガバナンス報告書の更新時期をどう考えるか
2026年08月10日

