サマリー
◆2026年2月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月差▲9.2万人と市場予想(Bloomberg調査:同+5.5万人)に反してマイナスに転じた。失業率についても、2026年2月は前月差+0.1%ptの4.4%と上昇し、市場予想(Bloomberg調査:4.3%)を上回った(悪化)。もっとも、2月の雇用者数については、景気に敏感な民間部門雇用者数(除く教育・医療)が継続的にマイナスとなっている基調の弱さに加え、医療従事者によるストライキや、米国の広範囲を襲った大寒波といった一時的な要因も下押しに寄与したとみられ、足下の雇用者数は振れ幅も大きい。雇用環境の基調判断については、3月分の雇用統計も併せて評価する必要があるだろう。
◆雇用環境の先行きについては不確実性が高まっている。トランプ減税2.0やFRBがこれまでに実施した利下げが景気の下支え要因となり、雇用環境の回復を後押しするとみられる。他方で、足下では中東情勢の悪化や追加関税措置を巡る混乱が再び生じており、先行きの不透明感が景気を下押しする可能性がある。さらに、AIの活用等を理由としたコストカットを公表する企業が相次いでいる。企業によるコストカットが広がりを見せることで、雇用環境の回復を抑制することも想定し得る。
◆金融政策について、足下の政策金利はFOMC参加者が想定する中立金利の想定レンジ内にあることから、1月のFOMCでは利下げが見送られた。2月の雇用統計は軟調な結果になったものの、ストライキや悪天候等の一時的な要因も含まれる中で、単月では雇用の下振れリスクを評価しづらい。また、足下では中東情勢の悪化に伴うエネルギー価格の上昇により、インフレ率が再加速する恐れもある。2月の雇用統計公表後のFOMC参加者の見解を確認すると、ボウマンFRB副議長やミランFRB理事は利下げの必要性を指摘した。他方で、その他のFOMC参加者は雇用環境の悪化が継続する場合の利下げは否定しないものの、2月単月の統計結果を理由とした利下げに対しては慎重な姿勢を示した。市場参加者の間でも、今回の雇用統計の後も利下げ期待は大幅には高まっていない。市場が過剰反応をせず、インフレの再加速懸念もある中で、現時点では3月のFOMCにおいては金利据え置きが想定される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米雇用者数は減少、過去分も大幅に下方修正
2026年7月米雇用統計:失業率は低下も、労働参加率の低下に懸念
2026年08月10日
-
米国:AIで代替される雇用者はいかほどか
直近で4%、AI活用が広がれば11%の雇用者が特に代替されやすい
2026年08月05日
-
米GDP 前期比年率+1.5%と減速
2026年4-6月期米GDP:内需は堅調も輸入が下押し
2026年07月31日
最新のレポート・コラム
-
中国:消費低迷の深層・非正規雇用の急増
所得格差縮小は非持続的か。社会保障不安とリスキリングの難しさ
2026年08月10日
-
米雇用者数は減少、過去分も大幅に下方修正
2026年7月米雇用統計:失業率は低下も、労働参加率の低下に懸念
2026年08月10日
-
2026年4-6月期GDP(1次速報)予測(改訂版)~前期比年率+2.5%に下方修正
直近公表の基礎統計を踏まえ、個人消費と外需をそれぞれ下方修正
2026年08月10日
-
指名委員会等設置会社の見直しによる企業への影響
機関設計の選択にとどまらないガバナンスの実効性確保が重要
2026年08月10日
-
コーポレート・ガバナンス報告書の更新時期をどう考えるか
2026年08月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
-
中国経済見通し:成長率目標に早くも黄信号
12.5%追加関税の影響は限定的だが、内需が急減速
2026年07月28日
-
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
-
26年度最低賃金改定のポイント②
全国加重平均は1,160円台(4%前後の引き上げ)に着地か
2026年07月21日
-
骨太方針のポイント① ~危機管理投資・成長投資で高成長を実現できるか
米国を上回る生産性向上ペースが必要で成長戦略の進捗管理も課題
2026年07月13日
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
中国経済見通し:成長率目標に早くも黄信号
12.5%追加関税の影響は限定的だが、内需が急減速
2026年07月28日
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
26年度最低賃金改定のポイント②
全国加重平均は1,160円台(4%前後の引き上げ)に着地か
2026年07月21日
骨太方針のポイント① ~危機管理投資・成長投資で高成長を実現できるか
米国を上回る生産性向上ペースが必要で成長戦略の進捗管理も課題
2026年07月13日

