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株式評価はArtか

2013年12月16日

経営コンサルティング部 主任コンサルタント 真木 和久

M&A取引は、大きく、①オークション形式、②相対取引(1対1)の2つに分けることができる。
オークションの場合は、株式の評価価格への対応は入札結果に直結するが、相対取引であっても、重要さは変わらない。
株式評価が折り合わずに、M&A取引が成立しないケースは、相当数あるものと考える。

このように、M&Aにおいて、株式評価は重要な鍵といえるが、それらはどうやって算定されるのであろうか。
一般的に、売り手は、より高く売ろうとする動機を持つ。逆に、買い手は、できるだけ安く買おうとする。
売り手や買い手は、通常、企業やファンド等であり、経済合理性に従って行動する。上場会社の場合は、株主への説明責任も生じるため、第三者の算定機関に株価評価を依頼するのが通常である。

では、売り手や買い手は、具体的に、どうやってM&Aの値段を決めるのか。
ターゲット企業が上場企業である場合、市場株価がついていることから、市場株価で算定すればいいのかというと、そう単純なものではない。市場株価は、流通する株式によって形成されるものであり、支配権を考慮したものではない。市場株価が少数株主にとって適正な価格であったとしても、支配権プレミアムを加味したものでなければ、支配権を得る買い手にとっての適正価格にならない。

そもそも、株式評価には、3つのアプローチがあると考えられる。①コスト・アプローチ、②マルチプル・アプローチ、③インカム・アプローチの3つである。
コスト・アプローチの代表例は、純資産価額方式といわれるものである。これは、ターゲット企業を仮に清算した場合の価値を算定する方法等である。
マルチプル・アプローチは、類似会社比較方式と呼ばれる。類似の事業を営む上場会社の財務数値と市場株価の倍率(PER・PBR等)から、ターゲット企業の市場株価を推定する方法である。市場株価方式も、このアプローチに含まれる。
インカム・アプローチは、ターゲット企業の将来収益を見積もり、それを現在価値に割引いて企業価値を算定する手法である。DCF方式が代表例であり、企業価値の算定としては、最も合理的かつ洗練された方法であるといわれる。ただ、DCF方式は、事業計画や割引率によって、価値が大きく変動するため、算定人の力量が大きく問われることになる。
株式評価は、Scienceであると同時に、職人的力量を問われる場合もある。その場合、株式評価は、Scienceであり、Artにもなる。

M&Aを行う場合、安易に、報酬の多寡で、算定機関を選択するのは危険である。例えば、料金が一番安い算定機関に頼んだとしよう。望んだ数値は、すぐ出てくるかもしれないが、それでもって、他の人に、合理的に説明できるだろうか。目先、得をしたと思っても、長い目で見ると損をした気になるかもしれない。

皆さんには、是非とも、信頼できる算定機関を、自分の目で見つけて頂きたい。

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真木 和久

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経営コンサルティング部
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