経済成長実感には、年率3%以上の賃上げが必要
2013年06月18日
黒田東彦新総裁の下、日本銀行が「量的・質的金融緩和」に踏み出し、デフレ脱却に対する期待が高まってきている。ただし、物価が上昇する一方で賃金が上昇しなければ、サラリーマン家庭が買えるモノやサービスの量は減少し、生活は苦しくなってしまう。
また、現在5%の消費税率は(景気条項が発動されなければ)2014年4月に8%、2015年10月に10%へと引き上げられる。消費税率の引き上げも、物価の押し上げ要因となる。
では、消費税増税を含め物価が上がっていく中で、今後、暮らしが豊かになっていくためには、どの程度の賃上げが必要なのだろうか?
家計にとっての経済的な豊かさを測るには、「実質可処分所得」を指標とするのがよいだろう。国の経済規模を、名目GDPから物価変動分を取り除いた実質GDPで求めるのと同様に、家計の可処分所得について物価変動分を取り除いたものが「実質可処分所得」である。
2012年時点で税引き前の年収が500万円のサラリーマン家庭(夫婦のうち一方が働き小学生の子が2人の4人世帯)をモデル世帯として、賃金上昇率が年率0%~3%の場合の2012年から2016年までの実質可処分所得の変動を試算したもの(年齢の変化を考慮しない)が下のグラフである(※)。
この間賃金が全く上がらなかった(賃金上昇率が年率0%)とすると、2016年の実質可処分所得は2012年より約30万円も減少してしまう。賃金上昇率が年率2%ならば、実質可処分所得はほぼ横ばい、緩やかながらも年々実質可処分所得を増加させるためには年率3%の賃上げが必要である。
この3%という水準は、安倍政権の経済界への賃上げ要請にいち早く応えたある小売業の会社の賃上げ率とも合致する。
果たして、賃上げの流れが日本全体に波及し、サラリーマン家庭が経済成長を実感できるようになるのか。今年(2013年)分の源泉徴収票に記載される「支払金額」が昨年(2012年)分より3%以上増えている人が多数となるか否かが今後の日本経済の行く末を見る上でのポイントとなるかもしれない。
(※)物価上昇率の予測値は、「日本経済中期予測(2013年2月)」(大和総研 経済調査部 経済社会研究班 近藤智也・溝端幹雄・神田慶司、2013年2月4日)による。

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- 執筆者紹介
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金融調査部
主任研究員 是枝 俊悟
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