春節から見える中国のあれこれ

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2013年02月05日

中国は2月10日に春節(旧正月)を迎え、一年で一番華やかな時期になる。春節の連休は2013年の場合、2月9日から15日とされており、新年の慶びとともに、家族と美味しいものを食べ、団らんを楽しむ。大みそかにあたる2013年2月9日には、日本の紅白歌合戦に相当する「春晩」がCCTVで放送され、今年はセリーヌ・ディオンが登場するとされている。個人的になんとも羨ましい。


しかし、一方で、この春節の時期は、中国が抱える課題が露呈してくる時期でもある。日本の年末年始と言えば、帰省ラッシュという民族大移動が発生するが、中国ではその悲劇的な状況が日本人の想像を超える。何故なら、“春運”と総称される春節前後(2013年1月26日~3月6日)の道路の旅客輸送延べ人数は31億人にも上るからである(1月21日、中国の交通運輸部発表)。内陸部の経済成長で農民工の出稼ぎ先が地元に比較的近くなり、中短距離道路輸送の需要が増している。長距離移動しなくなった分、地元に集まった親戚や友人と旅行を楽しむ傾向が高まっているといわれ、その結果、渋滞が発生し、日本でも頻繁に報道されるようになった中国の大気汚染は深刻さを増すのだ(「今月の視点-深刻化する大気汚染」新田尭之(2013年1月30日) 参照)。一部の地方政府は大気汚染が話題になってから公用車の利用を抑制するよう命じたが、春節の渋滞からすれば雀の涙のような努力である。ちなみに、中国鉄道部によると、同期間の列車の利用延べ人数は2億2,450万人と予想されている。背景には、乗車料金の高さ故に、利用客が中高所得者層に絞られることがあろう。

ただ、一方で、春節期間の帰省に乗り気ではない人々が若者中心に増えてきたという。理由は大きく分けて、3つ。1つ目は前述の混乱の中、チケットを取得することや、不明瞭な運行状況へ対応することの大変さが挙げられる。交通運輸部も人員補充・窓口拡大・時間延長・予約システムの拡充の努力をしている。2012年のネット普及率は42.1%(中国インターネット情報センターCNNIC発表)と、ここ数年で改善し、ミニブログ「微博」などの普及は目まぐるしい。鉄道部はネット環境の向上を背景に、2012年から高速鉄道の切符購入をインターネット経由で行えるようにしたが、前述の理由から、一部の中高所得者層の利用に留まっている。刷新されないバス運行システムがたたり、農民工達が周りの目を気にせずターミナルのベンチに横たわって寝ながらバスを待っている毎年の風物詩が今年も沢山見られるわけだ。

2つ目は、巨額の出費が必要とされる点。交通費だけでなく、家族・親戚への手土産の購入も含めれば、最低賃金が引き上げられたとはいえ、1、2か月分の給料があっという間に無くなる。もてなす側も豪華な料理の確保で、相乗的に物価が高くなりやすい。ただでさえ物価が高騰する時期に、今年の場合は悪天候が加わり、政府は供給量の確保と価格安定のために緊急対策を出したほどだ。また、食べきれないほどの料理を盛り付け、振る舞われた方も残すのが“中国の礼儀”だが、その伝統も無駄な消費の撲滅の一環で改めるように働きかけられている。

3つ目は、所得格差の拡大や晩婚化が進む中国で、若者が家族・親戚に“収入”や“結婚”の話題を振られることが煩わしいと思っているとの話も出ている。“仕事が忙しい”“急に仕事が入った”、このような言葉で帰省を回避するらしい(どの国も“仕事”は格好の逃げ場なのかもしれない)。


このように、春節は、国民があらゆる面で中国の課題と直面しながら、集団化することもあり、政府も特に“民生”に気を配るタイミングとなる。共産党幹部は“先行きがそこまで安定していない世の中なのだから、春節であっても倹約に努めよ”と国民に呼びかけ、政府関係者を中心に2012年12月に発表した「八項規定(実質的に関係のないものを切り捨て、簡素さを追求する方針)」を徹底する構えだ。また、農村の貧困層向けに春節のタイミングで生活補助金を支給する方針を発表している。ただ、浪費はしてほしくないが、“消費で景気を支えてほしい”との本音に近い政策も出ている。国慶節に続き、観光地の入場料引き下げや、春節期間の2月9日から15日までは高速道路の通行料を免除する。どうも政府のスタンスが矛盾しているのでは・・・と感じる一面も。

いずれにしろ、一日も早く「新四つの近代化(新しいタイプの工業化、情報化、都市化、農業の近代化)」を実現して、健全に内需を盛り上げられる社会を構築しなければならない、そう決意を新たにする新年になるだろう。

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