サマリー
中国各地の都市部で大気汚染が深刻な問題となっている。人民日報によると、1月14日には、74ヵ所の観測地点のうち、33ヵ所で大気の汚染度を示すAQI(Air Quality Index)が6段階中最悪の水準となった。この水準の場合、全ての人は野外活動を避け、中でも子どもや老人などは体力の消耗を避けるべきだとされる。
汚染物質の中でも特に有害とされるのはPM2.5と呼ばれる粒子である。この物質は非常に小さいため、通常のマスクで防ぐことができず、体内に吸収されるとぜんそくや呼吸不全、肺がんなどを発症するリスクが高まるとされる。1月13日には北京の一部区域でPM2.5の濃度が一立方メートルあたり900マイクログラムを超え、中国の環境基準の12倍以上、日本の環境基準の26倍以上となり、深刻な状況となっている。
そのため人々の日常生活に多大な支障が出ている。中国青年報が31省(自治区・直轄市)の6,913人を対象に実施したアンケート(1月22日に公表)によると、この度の大気汚染によって91.4%の人々が生活に悪影響が生じていると回答。このうち50.4%がせきやのどの痛みなどを感じ、47.3%が窓を閉め切り、38.9%が外出を控え、38.9%が外出の際にマスクを着用し、そして22.7%が自動車の運転頻度を減らす、と回答している。
このような状況を受け、一部の都市では、大気汚染の原因である工場からの排煙や、自動車の排気ガスを抑制するため、公用車の使用制限や有害物質を排出する工場の操業停止等の措置を取ったところもある。生産などの経済活動に支障が出かねない状況となっている。
環境保護部は2012年12月5日に「重点区域大気汚染防止第12次5ヵ年計画」を公表し、2011年から2015年までの5年間で3,500億元(約4兆9,000億円)の投資をするとした。内訳をみると、排気ガスの基準を満たさない自動車を806.6万台淘汰することに対し940億元(約1兆3,160億円)、電力業・鉄鋼業などから発生する二酸化硫黄の除去に対し730億元(約1兆220億円)を投資することなどが示された。
大気汚染を含めた公害問題への対応は、まさに待ったなしとなっているのである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:トランプ関税2.0で25年は3.9%成長へ
迂回輸出は当面温存。「トランプ関税2.0」の長期化は想定せず
2025年04月23日
-
中国:米国の対中追加関税率は累計104%→145%、中国経済への悪影響はほぼ変わらず
中国は交渉(ディール)の用意があることを示唆
2025年04月11日
-
中国:米国の104%追加関税、悪影響には天井
累計104%の追加関税で中国の実質GDPを2.84%押し下げ
2025年04月09日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日