胡錦濤・温家宝政権の功績と新指導部に託される課題
2012年10月24日
2012年11月8日開催の中国共産党第18回党大会、そして2013年春の全人代を経て、10年間続いた胡錦濤 総書記(国家主席)と温家宝 首相を中核とする指導部から、習近平 国家副主席と李克強 副首相を中核とする新指導部への移行が想定される。
胡錦濤氏、温家宝氏は、甘粛省、青海省、チベット自治区など経済発展段階が相対的に遅れた貧しい地方での勤務経歴を積んだ経緯があり、「低所得者層の底上げ」に腐心してきた。2005年以降は、(1)生産高の15.5%を税金として徴収していた農業税の撤廃や農作物価格の引き上げ、(2)都市化の促進、(3)2006年以降の最低賃金の大幅引き上げ、など農村住民と都市低所得者層の所得増加が積極的に図られた。
特に、胡錦濤・温家宝政権は、都市低所得者層の所得増加の方法として、最低賃金の引き上げを重視し、2006年以降、各地方政府が競うようにして引き上げている。この結果、従来、都市部では高所得者層ほど高い所得上昇率を享受していたのが、2006年~2007年、そして2009年~2011年は、低所得者層の方が高い所得上昇率となるなど、低所得者層の底上げと格差縮小に一定の効果を発揮したといえる。最低賃金は、農村からの出稼ぎ労働者に適用されるケースも多く、その大幅引き上げは、農民の所得向上を狙った方策でもある。
一方で、中国家計金融調査・研究センターが2012年5月に発表した「中国家計金融調査報告」によると、家計の55%が貯蓄ゼロか、ほぼゼロであるという。この結果は、これまでの取り組みの方向性は評価できる一方で、その成果はまだまだ不十分であることを示している。今後も中低所得者層の収入の持続的な底上げは不可欠であろう。
中国が持続的安定成長のために掲げる「投資主導から消費主導への経済発展パターンの転換」を実現するには、中低所得者層の持続的な底上げに加え、相続税の導入など所得再分配機能の強化、さらには都市と農村を分断する戸籍制度改革などが避けて通れまい。しかし、これらは既得権益層の痛みを伴うものも多い。新指導部に託される課題は重い。
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調査本部
主席研究員 齋藤 尚登
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