1. トップ
  2. レポート・コラム
  3. コラム
  4. 英国事情:2012年はLIBORの年?

英国事情:2012年はLIBORの年?

2012年07月24日

金融調査部 主任研究員 鈴木 利光

英国が揺れている。開催が間近に迫るロンドン・オリンピックへの期待によって、ではない。ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の不正操作問題によって、である。


この問題が公になったのは、英国大手銀行Barclaysが、LIBORの不正操作を理由に、英米規制当局に対して合計2億9,000万ポンドの罰金を支払う旨公表した6月27日である(※1)。それ以降、本稿執筆時点(7月12日)にいたるまで、この問題に関しては多くの報道がなされており、また、規制当局による調査が進行中であることから、ここで深入りすることは避けたい。


しかし、この問題は、英国の法制度に関して、ある興味深い事実を浮かび上がらせている。それは、現行ルール上、LIBORの不正操作に関与した個人を刑事罰に処することが困難だということである。


英国金融サービス機構(FSA)のターナー長官いわく、少なくともFSAには、これらの個人を刑事罰に処する権限がないという(※2)。FSAはその理由を明らかにしていないが、LIBORの不正操作を(刑事罰の適用が可能な)相場操縦と同等に扱うことが困難ということなのだろうか。目下、重大不正捜査局(SFO)が、現行ルール上、これらの個人を刑事罰に処することが可能か否かを調査しており、7月末には結論を出すという(※3)


通常のビジネスにおいては、不正(fraud)は犯罪である。銀行業務における不正に限っては犯罪ではないというのは、一般の感覚とは相容れないといえよう。


そこで、英国財務省はさっそく、改革に乗り出している。


すなわち、英国財務省は、マネジメント層による重大な不正行為に対する刑事罰を新たに導入することを検討している(※4)


ここでいう「重大な不正行為」を定義することは困難であることが予想されるものの、LIBORの不正操作がこれに該当することは間違いないだろう。


また、オズボーン財務相は、LIBORの設定への参加を規制対象行為とすべきか否か、(現状のように銀行の申請ではなく)実際の取引に基づくレート設定の実現可能性、そしてLIBORの設定とガバナンスにまつわるプロセスの透明性を今夏中にレビューするという(※2)


周知のとおり、英国は目下、銀行規制改革として、リテール・バンキングとインベストメント・バンキングの分離(リングフェンス)の法制化を進めているが、LIBORの不正操作問題はこの改革を後押しすることになるだろう。というのは、トレーディング部門と(金利を管理する)トレジャリー部門との間の不正な情報のやり取りから発生するLIBORの不正操作を防止するには、リングフェンスによるファイヤーウォールの設置が有効と考えられるからである。


英国の2012年は、女王戴冠60周年(ダイヤモンド・ジュビリー)やロンドン・オリンピックではなく、LIBORの不正操作問題とともに記憶されるかもしれない。英国ファンである一個人として、とても残念に思う。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
執筆者紹介
金融調査部
主任研究員 鈴木 利光