取引所でも売買できる個別有価証券のオプション取引
2012年07月09日
オプション取引とは、ある資産を一定期間後にあらかじめ定めた金額で買う(もしくは売る)“権利”を売買する取引である。オプション取引は1つの原資産に対して“買う権利”と“売る権利”があり、その上で“権利行使する時期”や“権利行使する価格”を設定して取引しなければならないため、現物や先物取引と比べるとやや複雑である。
オプションの売買は相対、もしくは取引所を通して行う。日本では東京証券取引所(東証)と大阪証券取引所(大証)で株価指数や株式、債券などを原資産とするオプション取引が行われている。あまり知られていないが、個別有価証券のオプション取引も可能であり、トヨタ自動車や武田薬品工業など、本稿執筆時点で大証では155、東証では166の有価証券を原資産としたオプションが上場している(なお、118銘柄は重複上場)(※1)。
近年、両取引所はデリバティブ取引を増やすべく、システム強化(東証はTdex、大証はJ-GATEというシステムを導入)、取引時間の延長など様々な取組みを行っているが、個別有価証券のオプション取引に関しては特に東証が拡大に力を入れている。個人投資家の取り込みを強化しており、ソーシャルメディアの活用など、広報活動を積極化している。2011年にはオンライン証券4社が個人投資家向けの取扱いを開始し、個人がインターネットで簡単に注文が出せるようになった。
東証は流動性の観点でも利用しやすい市場である。個別有価証券のオプション取引はまだ活発に売買されているとは言い難い(図表参照)。オプション取引のメリットである“ヘッジ機能”や“レバレッジ効果”は、いつでも決済できる(流動性のある)市場で取引することが前提であるが、東証にはマーケットメイカーがおり(大証も過去には存在していたが現在は不在)、流動性が確保されている。
オプション取引は権利の売買であるため価格の動きが独特であり、取引に伴うリスクも独特であるが、それ故に投資戦略も多様である。近年、日経225オプションの取引高が増えてきているが、次は個別有価証券のオプション取引にもその流れが波及しないかと、と個人的に期待しているところである。
<個別有価証券のオプションの取引代金の推移>

(出所)東証および大証ウェブサイトより大和総研作成

(出所)東証および大証ウェブサイトより大和総研作成
(※1)ETF、REITを含む。国債を除く。
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- 執筆者紹介
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金融調査部
主席研究員 太田 珠美
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