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「低所得者への年金加算」は個人単位ではなく世帯単位で行うべき

2012年05月11日

金融調査部 主任研究員 是枝 俊悟

2012年3月30日、政府は国民年金法等の改正案を国会に提出した。この中に、「低所得者への年金加算」も含まれている。施行時期は、消費税率10%への引き上げと同じ、2015年10月とされている。

「低所得者への年金加算」の枠組みは以下の通りである(対象者については、法案には記載されておらず、政省令にて規定されるものとされている)。

低所得者への年金加算

(出所)厚生労働省資料

すなわち、「低所得者」の判定は、原則として個人単位で行うものとされている。

平均的な年金受給額の世帯(夫180万円、妻60万円)(※1)の場合、妻分について、「低所得者への年金加算」の対象となる(夫も妻も市町村民税非課税で、かつ妻分の年金その他の収入が老齢基礎年金満額以下という要件を満たす)。

低所得者への年金加算について、筆者は「個人単位」で判定を行うのは不合理・不平等であると考える。

第3号被保険者制度(厚生年金・共済年金の被保険者の配偶者であれば、国民年金保険料を払わなくてよいとする制度)は、昭和61年(1986年)から始まった制度であり、第3号被保険者制度創設前は、厚生年金・共済年金の被保険者の配偶者については、国民年金は任意加入であった。国民年金に任意加入していなかったために、妻分の基礎年金受給額が満額に満たない者も多い。

任意加入であった時代に保険料を納めてきたために、満額の基礎年金(国民年金)を受け取っている者は加算の対象にならず、任意加入であった時代に保険料を納めなかったために、基礎年金(国民年金)の受給額が満額より少なくなっている者が加算の対象になるのは、不合理・不平等である。

それでも、世帯単位で見て年金受給額が少なく、生活が著しく困窮している世帯に対して年金を加算するのならば、貧困・格差対策として納得性があるかもしれない。しかし、政府の案では、「家族全員が市町村民税非課税」であれば、世帯収入合計額に関わらず、年金加算の対象になるものとしている。「市町村民税非課税」という基準は、厚生年金の加入者の平均的な年金受給額(180万円)でも該当することとなり、生活が著しく困窮している世帯の基準としては適当ではない。

低所得者への年金加算の基準については、所得を「個人単位」ではなく「世帯単位」で判定すべきだろう。

(※1)2010年度の老齢厚生年金(老齢基礎年金分を含む)の支給額の平均(夫分)は月15.3万円、老齢基礎年金の支給額の平均(妻分)は月5.3万円であり、夫婦合計の年金支給額は月20.6万円程度である(日本年金機構「日本年金機構の主要統計(平成22年度版)」による)。

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是枝 俊悟

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