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英国事情:カバード・ボンドのEU統一規制を求める英国

2012年04月24日

金融調査部 主任研究員 鈴木 利光

金融危機後における欧州の資金調達を特徴づけるとすれば、それはカバード・ボンドの活用である。欧州カバード・ボンド協議会(ECBC)の統計によると、2010年および2011年上半期においてカバード・ボンドの発行は欧州銀行の資金調達(証券化商品の発行および短期の資金調達を除く)の38%を占めるに至っており、シニア無担保債の発行(同51%)に迫る重要性を有している。

しかし、このような重要性にもかかわらず、EUレベルのカバード・ボンド規制というものは存在しない(EU加盟国が各国レベルの規制レジームを有するにとどまる)。

こうしたなか、2012年3月29日、英国財務省のMark Hoban金融担当副大臣は、ECBCの総会にてスピーチを行っている(※1)

英国は、2010年末時点において、カバード・ボンドの発行残高が世界で5番目に大きく(図表)、メイン市場の一角を占めているといえる。英国のカバード・ボンドの新規発行は、2008年には急激に増加するものの、金融危機の影響から2009年には増加前の規模に戻るように大幅に落ち込み、2010年も続いて減少となっていた。しかし、Hoban氏のスピーチによると、2011年の新規発行は、前年比110億ポンド増となっている。

そして、英国は、2011年末には、既存のカバード・ボンドの規制レジームにマイナーな改定を加えている(2013年1月施行)。

規制レジーム改定の目的は、カバード・ボンド市場の透明性を強化し、EU市場における比較可能性を向上させることである。具体的には、証券化商品のカバー・アセットへの組み入れを禁止し、超過担保の最低保有水準を導入し、ローン・レベル・データの四半期開示を義務付けることとしている。この改定により、英国のカバード・ボンドの規制レジームは、ドイツやフランスといったカバード・ボンド先進国の規制レジームと同等の厳格性を備えることになるといえる。

Hoban氏は、こうした英国の直近の動向を引き合いに出し、EUレベルのカバード・ボンド規制(とくに、カバー・アセットの開示基準および適格担保基準の最低水準)の必要性を訴えている。そして、その際には、少なくとも英国の規制レジームと同等のスタンダードを設定すべきであると主張している。

英国の規制レジームをスタンダードとするか否かにかかわらず、EUレベルのカバード・ボンド規制を設定することが望ましい。というのも、バーゼルⅢや、現在議論されている金融機関の破綻処理枠組みにおけるカバード・ボンドの優遇措置(※2)を考えると、欧州の金融機関にとって、安定的な資金調達としてのカバード・ボンドの重要性が、今後よりいっそう増していくはずだからである。そうなった場合、比較可能性の向上や規制アービトラージの防止が見込めるEUスタンダードの設置は不可欠である。

こうしたことから、EUレベルのカバード・ボンド規制に関する議論が年内に開始される可能性があるのではないかと考えている。

図表 6大カバード・ボンド市場の規模(2010年末時点)
図表 6大カバード・ボンド市場の規模(2010年末時点)
(出所)ECBC“2011 ECBC EUROPEAN COVERED BOND FACT BOOK”[2011年9月1日]

(※1)英国財務省ウェブサイト参照
(※2)バーゼルⅢは、流動性カバレッジ比率の算定において、一定の要件を満たすカバード・ボンドを適格流動資産に組み入れることを認めている。また、EUや英国では、金融機関の破綻時における「ベイルイン」(債権者の損失負担)の対象から、カバード・ボンドを除外する方向で検討が進められている。

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金融調査部
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