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産業再生には“担い手育成”の視点が不可欠

2011年07月07日

調査本部 執行役員 調査本部副本部長 兼 金融調査部長 保志 泰

東日本大震災から3ヶ月余り経過したところで、復興構想会議の提言が発表された。提言では「被災地域の復興なくして日本の再生はない」という原則を掲げているが、今後の被災地における産業の復興過程は、これからの日本全体の産業再生における試金石となるに違いない。提言で具体的に取り上げられたのは「農林業」「水産業」「観光」といった地域の特性に沿う産業であるが、日本全体の産業競争力強化にあてはめても、共通した面が多分にある。

一般に、“産業再生”というと企業の形や産業の体裁をどう整えるか、という面を中心に考えがちである。大企業を中心とした国際的な競争力強化の視点で考えるとそういう捉え方になるが、中小企業も含めた日本の産業ピラミッドを考えた際に、必ず考えなければならない課題は“次世代の担い手をいかに確保するか・育てるか”である。今後、相当なスピードで少子高齢化が進む日本にとって、その視点を抜きに産業再生は語れなくなる。被災地域は、高齢化や生産年齢人口減少の面で日本全体を先取りしているといっても過言ではない。特に第一次産業では担い手の高齢化が進んでおり、今後、産業をもとの形に戻したとしても、次世代の後継者が出てこなければ、最終的には衰退の途を歩んでしまう懸念すらある。担い手が育つような形に産業再生を進める必要があるだろう。日本全体に置き換えて考えると、日本の技術を支えてきた“職人技”を蓄積している中小企業の多くが、後継者問題に頭を悩ましている。

では、いかに次世代の担い手を惹きつけるか。少なくとも若者にとって将来性を見出せる産業となることが必要であり、そのためには、収益を安定的に稼げるように持っていくことが大切だ。第一次産業においては企業体の参入を真剣に検討すべきであろう。一方、製造業においては価格競争の世界から付加価値競争の世界に何とか転換したいところだ。でなければ、コスト削減強化と非正規雇用増の悪循環から抜け出せない。それは、サプライチェーンの頂点にある大企業が明確にしていく必要があろう。

また、今回の震災では、サプライチェーンが寸断され、複線化によるバックアップが課題となっている。これに対して、中小企業が相互のネットワークを強めることが一つの解決策となろう。これはサプライチェーンの複線化に資するとともに、各企業が付加価値の高い仕事の安定的な操業を可能にするという、一石二鳥の効果が期待される。

このように、日本の産業システム全体として高付加価値化と安定化を追求することが、中小企業の次なる担い手を惹きつけて、産業全体の再生・強化に繋がるのではないだろうか。

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保志 泰

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