震災復興、増税に言及する意味
2011年04月27日
東日本大震災からの復興について、財源は国債か税かという論争がある。しかし、重要なのは具体的な計画と事業である。それが決まっていないのに、国債にしろ税にしろ数字は決められない。ただ、事業と財源を一体で決めていかないと復興政策が前に進まない。今回の過酷な震災は、阪神・淡路大震災の時から政府債務が2倍以上となる中、ねじれ国会という物事が決まらない環境で発生した深刻さがある。
震災復興は、そのすべてを政府だけでやろうとせず、民間資金による投融資を最大限引き出すことこそ重要だ。この点、復興スキームの中に一定の増税を絡ませることは、民間資金の「呼び水」になると期待される。東日本大震災は極めて広域で複雑な災害であり、復興は国家の成長戦略という性格も強い。経済的社会的に期待リターンが高い復興事業に、現在世代が増税という政治的意思で関与することが考えられてよい。
また、日本は政府の経常支出である社会保障費や一般行政サービスに十分な税収を充てず、あるいはそれらの十分な削減を行わず、政府債務を積み上げ続けている。平時における過怠が、有事の際の対応を制約しているといわざるを得ない。超高齢化、産業競争力低下、大震災、原発事故に加えて、金利上昇という難題を抱えることがないよう、復興に一定の増税を組み合わせる工夫は必須である。
さらに、増税論議は単に政府収入を増やすということではなく、歳出削減の動機づけでもある。これまでのところ、子ども手当や高速道路無料化の拡大取り止め、国会議員歳費の削減などが打ち出されたが、それぞれは小さい金額であっても歳出削減を積み重ねることは大きな改革になる。民主党のマニフェストに沿った予算には批判があるが、マニフェストにあった公務員人件費削減が議論の俎上にのっている。
復興のための増税は時限的でよいし、直ちにではなく復興に伴う景気の正常化に合わせて実施すればよい。そして被災者はもちろん、復興を支援する人々の所得環境を大きく悪化させるほどの増税は避けるべきである。一定の増税について、税目、規模、タイミングは様々に考えられる。国債か税かという、二者択一の思考に陥らずに検討を急ぐべきである。
それにしても、復興の前に1日でも早く当面の緊急予算が必要であるのに、テクニカルに国債発行を回避しようとしている気配があるのは理解に苦しむ。本来、そういう時に発揮されるのが、国債の機能である。特別会計を含めたやりくりは必要だが、年金国庫負担割合引上げ分や国債整理基金繰り入れ分を別の歳出に充てれば、政府のネット債務増、つまり財政赤字そのものだ。被災者のことを考えれば、本質的とは思えない話をしている時間はない。
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