中国の一人っ子政策の行方

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2011年02月08日

中国で「一人っ子政策」が実施されて2010年で30年を迎えた。一人っ子政策は出生率の急激な低下をもたらし、経済発展による死亡率の低下・長寿化により、社会の高齢化問題がクローズアップされている。中国国家計画生育委員会によると、中国の合計特殊出生率(一人の女性が生涯で産む子供の数)は、1992年以降、人口置換水準(人口が減りもしなければ増えもしない)を下回った。一方で、平均寿命は長寿化した結果、65歳以上人口の総人口比は2000年に7.0%と、中国は発展途上国で最も早く老齢化社会入りをした。経済発展段階は途上国なのに、人口構造だけが、先進国化してしまったのである。

この先、中国の高齢化問題はさらに先鋭化する。2008年の国連人口予測によると、(1)人口ボーナス値(労働年齢人口/(14歳未満人口+65歳以上人口))は2010年にピークとなり、その後低減、(2)労働年齢人口は2015年に9.98億人とピークを迎え、2030年~2050年の20年間で1億人強減少、(3)65歳以上人口の構成比は、2030年には15.9%と高度高齢化社会に入り、2050年には23.3%と超高齢化社会の一歩手前となるとされる。このことは中国経済の長期見通しにも暗い影を落とすことになろう。

中国の少子高齢化への処方箋のひとつは、一人っ子政策の見直しによる急激な少子化の緩和である。中国の学者達は、少子高齢化緩和の切り札として、「二人っ子政策」への転換を政府に提言している。中国では、ごく一部の地域で「二人っ子政策」がテストケースとして20年以上続けられているが、その結果は良好で、出生率は上昇したが合計特殊出生率が置換水準(2.1)を超えることはなく、男女比も正常となっているという。今後の中国の長期的な成長性を占う要因のひとつとして、一人っ子政策の行方にも注目したい。


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齋藤 尚登
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経済調査部

経済調査部長 齋藤 尚登