科学発展のためにタダでできることがある

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2010年12月02日

  • 原田 泰
最近では人気が低下したようだが、人気絶頂期の事業仕分けでも、科学予算を削ることには批判的な意見が多かった。関係者は、アメリカやヨーロッパや中国がやっているから日本もすべてやるべきだというのだが、アメリカやヨーロッパ全体のGDPは日本の3倍あり、しかもヨーロッパの政府支出の対GDP比は日本の2倍ある(アメリカは同じ)。すべての分野で同じだけのことをするのは無理である。

もちろん、素人の仕分け人が選んだ結果が絶対に正しいはずはないが、どの分野に重点を充てるべきかの専門家がいるとは思えない。どんな優れた科学者でも、その分野の専門家であって、分野横断的にどこに重点を充てるべきかの専門家ではない。また、日本のスーパーコンピュータは、他国のスーパーコンピュータのざっと10倍のコストがかかるようだが、関係者の誰も、これを問題としていない。どこに重点を置くか、どうしたら低いコストで高い成果を上げられるかを考えることは依然として必要だ。

自然科学は知らないが、社会科学については、コストをかけずに、日本の研究レベルを引き上げる方法がある。政府が膨大な費用をかけて集めているすべての統計の個票を、プライバシー情報を秘匿した上で公開することだ。すべての個票データがコンピュータに入力された上で集計されている。この情報を公開することに追加的なコストはほとんどかからないはずである。かかるのであれば、追加的コストを利用者に請求しても良いだろう。

一部の個表は面倒な手続きで公表されるようになったが、例えば、全国学力テストの個票は公開されていない。政府は、どうしたら子どもの学力が上がるのかを科学的に明らかにすることを拒否している訳だ。そんな政府に、自然科学であれ、社会科学であれ、日本の科学を発展させる能力があるとは思えない。まず、タダでできることをしてから、費用のかかることをするべきではないか。

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