為替とM&A

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2010年11月30日

  • 間所 健司
今年は新年度となった頃より米ドルやユーロなどに対して急激な円高が進んできた。1980年代後半からの円高・株高・債券高のトリプル高による、いわゆるバブル景気においては、日本企業による欧米企業に対するM&Aや海外不動産、海外リゾート、絵画などの取得が積極的に行われた。当時の円高は「プラザ合意」が引き金となったものであるが、今回の円高はまったく様相を変えたものとなっている。

急激な円高の以前から、わが国企業の海外進出が積極化してきている。その背景としては、少子高齢化による国内マーケットの縮小、新興国市場の高成長が言われている。今年に入ってからは、資生堂が米国NASDAQに上場しているBare Escentuals社の株式公開買付けを行い子会社化し、楽天がフランスでECサイトを運営するPrince Minister社を子会社化した。また、日本電産が米国Emerson Electric社のMotors&Controls事業を買収したことに合わせ、海外子会社群を統括する持株会社を設立し、海外事業のより一層の成長を目指すなど、大手各社は海外における事業展開を積極化させてきている。

現在の円高をグローバルな事業拡大のチャンスととらえて、積極的なM&Aを仕掛けるときなのかもしれない。とはいえ、最近の適時開示情報をみる限りでは、まだまだわが国の多くの会社はM&Aで海外企業を買収するというよりも、現地法人を設立して一からスタートさせようとする動きの方が多いように感じられる。

その一方で、中国企業による日本企業の買収が相次いでいる。昨年の6月に中国家電量販店大手の蘇寧電器がラオックスを買収したことが大きな注目をあびた。それに続いて、中国の山東如意科技集団が、本年7月にレナウンの第三者割当増資を引受けて筆頭株主となったことは記憶に新しい。今後とも高い成長を続けそうな中国は、「強い元」を背景にわが国を含め、世界のM&Aマーケットを牽引していく勢いである。

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