注目されるスマートインフラ ~もう一つの「スマート」市場~
2010年11月29日
今年も残すところ約1ヵ月となったが、例年この時期は今年の新語・流行語大賞(※1)(12月1日発表)が発表される時期である。今年の新語・流行語大賞を個人的に選ぶとすれば、『スマートフォン』となる。スマートフォンは、新聞で連日取り上げられ、最近ではほぼ毎日誰かが操作している姿を街中で目にするため、流行の実感があるからだ。ところで、『スマートフォン』という言葉は、「スマート(賢い、優れた)」と「フォン(電話)」を組み合わせた造語であるが、近年インフラストラクチャー(以下インフラ)の世界でも、「スマート」と組み合わせた造語が流行である。例えば、「スマート」と、道路や水道など各インフラを指す言葉を組み合わせた造語が幾つもつくられ、各インフラの総称として『スマートインフラ』なる言葉が新聞などで取り上げられている。
スマートインフラには、厳密な定義はないが、通信機能やセンサー機能により、従来のインフラと比べ、情報収集能力・情報処理能力が高く、より効率的に公共サービスを提供できるインフラ又はインフラの一部機能のことを指す。代表的な例には、「スマートグリッド(電力網)」や「スマートトランスポーテーション(交通)」、「スマートウォーター(水道)」などが挙げられる。例えば、スマートグリッドは、人口知能や通信機能を搭載した計測機器等を介して、電力の供給者と需要者の双方向で電力を制御・管理する機能を持った電力網のことで、従来の電力網に比べ、電力需要を把握しやすく、発電出力が一定でない風力発電、太陽光発電など代替エネルギーにも柔軟に対応できる。また、スマートトランスポーテーションは、交通渋滞に関する予測、交通事故や代替となる交通手段の情報の提供により、渋滞や事故の減少を通じて、より効率的な輸送を目指す交通システムである。
スマートインフラの多くは、まだ実証試験の段階にあるが、交通渋滞の緩和など成果を挙げている事例があり、米国、英国、シンガポールや日本などで実験が進むなど世界各地で注目が高まっている。背景には、まず人口増加や経済成長、都市化の進展に対して、既存のインフラでは対応が困難になってきており、世界的にインフラに対する需要が拡大していることが挙げられる。例えば、世界の都市では、年々交通渋滞が悪化しており、米国では交通渋滞による経済的損失が年間6.5兆円(780億ドル、1ドル=83円換算、テキサス運輸研究所調べ)、日本では同11.6兆円(国土交通省調べ)にも上るとされる。次に、インフラ整備の主体である政府や地方自治体にインフラを整備する財政的余裕がなくなっていることに加え、環境問題や建物の密集(特に都市圏)により、新たにインフラを整備できるスペースが少なくなっていることから、インフラを効率的に使うことが強く求められていることも理由に挙げられる。日本など人口が減少している国や高齢化が進んでいる国々では、労働力の減少という問題も抱えている。スマートインフラは、まだ実証段階であり、既存のインフラに比べコストが高いことから、実際に導入されるまでには少なくとも5年以上かかるとされるが、長期的には今後益々注目が高まっていく分野である。
(※1)1年の間に発生した様々な「ことば」の中で、広く大衆をにぎわせた新語・流行語を選ぶとともに、その「ことば」に深くかかわった人物・団体を顕彰する賞。毎年12月上旬に発表される。『現代用語の基礎知識』読者審査員のアンケートから、上位語がノミネート語として選出され、そこから審査委員会によってトップテン語、年間大賞語が選ばれる。

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