“中国の特色あるCSR”の姿 —政府系シンクタンクのCSRランキング—

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2010年11月26日

  • 横塚 仁士
中国政府は環境や労働問題などの解決の一環として、2000年代後半から社会的責任(CSR)の普及を推進している。中国におけるCSRは政府によるトップダウン型で進められているため、企業が自主的にCSR活動を行う日本とは対照的であり、いわば“中国の特色あるCSR”とも表現できる。

“中国の特色あるCSR”を代表する事例として、政府系シンクタンクである「社会科学院」によるCSRランキングが挙げられる。社会科学院は昨年12月に、中国の国有企業、民営企業、外資系企業の合計300社のCSR活動を各社の開示したデータをもとに分析し、ランキングを作成して公表した。ランキングでは中央政府が管轄する有力な国有企業が上位の大部分を独占し、外資系企業は国有企業、中国の民営企業よりも低い評価が下された。日系企業で上位100社に入ったのは3社という結果であった。

本年10月にも2回目となる調査報告が行われ、外資系企業は前回調査と同様、国有企業や民営企業に比べると相対的に低い評価を下された。上位100社に入った日系企業は2社に減り、順位を落とす企業が多かった。

外資系企業の順位が低い理由は、CSRへの取組み自体への評価が低いわけではなく、中国国内におけるCSR活動を中国語で情報開示しているかどうかという点にある。そのため、中国企業が有利になることは否めない。このような点からも、ランキングの結果は公平性という点で疑問が残るという指摘もある。

しかし、CSRランキングが作成され、さらに具体的な企業名が記載された報告書が書籍として店頭で販売されている、という事実はある程度深刻に受け止める必要があるのではないだろうか。政府系シンクタンクがランキングを作成・公表したことは、純粋な研究という側面に加えて、今後も中国政府が外資系を含む中国で事業を行う企業にCSR活動を求めていくというサインだと考えるべきであろう。

ランキングの公表を受け、一部の日系企業は中国内でのCSR情報の開示を強化する動きを見せている。筆者の知る日系企業の担当者は「情報を開示することが直接に利益につながるとは思わないが、開示をしなければ中国市場でスタートラインにさえ立てなくなると感じている」と話してくれた。

現時点では中国内でCSRという用語や概念が民間にまで浸透していることを裏付けるデータはない。しかし、中国でビジネスを行う上で重視すべき存在である政府がCSRを推進し、政府からの圧力を受けた国有企業が先導役となってCSR活動と関連情報の開示を行っている現状を鑑みると、取引先や顧客など様々なルートを通じて民間にもCSRが普及する可能性がある。外資系企業はこのような点を踏まえ、中国での事業展開と同時にCSR活動や情報開示を行うことが求められると考えられる。

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