原油高騰までコモディティ高は続こう

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2010年11月17日

  • 濱口 政己
9月以降、CRB指数は15%上昇しており、NYダウや日経平均の上昇を上回っている(11月12日時点)。ドル安とともに、(これはコモディティ市場に限った話ではないが)足元では過剰流動性への期待が上昇要因と考えられる。その流動性に関しては、11月3日のFOMCを経て期待はいったん織り込まれた感があり、逆に中国の利上げ警戒観測が高まった11月12日にCRB指数は3.6%下落した。この先の過剰流動性相場について、どう見ればよいのだろうか。

ごく短期で見ればドル安が落ち着いていることもあり、一進一退の動きとなろう。米国先物市場では歴史的に高い水準に積み上がったままの「ドル売り」、「コモディティ買い」のポジションが反転する可能性もある。ただし調整は軽微とみている。

その後、中期的にはコモディティ全般で上昇トレンドが維持されると判断している。新興国の多くは内需が経済成長の原動力となっており、景気減速のリスクが相対的に小さい。とすれば、コモディティ市場では根本的に新興国を中心とした実需への期待、ひいては資源需給の逼迫への思惑が継続し得る。また米国の出口戦略が始まるまで本格的な流動性の縮小が起きることもないだろう。豊富な流動性が実需の伸びへの期待からコモディティ市場へ流入する経路は健在である。

では、過剰流動性相場はどこまで続くとみておくべきか。今回も07~08年のコモディティ高と同様、原油高騰が終焉のシグナルになると想定している。当時を振り返ると、07年央に米サブプライム・ローン問題が持ち上がり、同問題はその後米国から欧州へと広がりをみせた。世界的に金融市場が混乱し、実体経済への連鎖が懸念される過程で、米FRBは同年8月に公定歩合の緊急引き下げ、9月にFFレートの大幅引き下げ(50bp引き下げ)へと舵を切った。為替相場は金融緩和期待から08年春までドル安の様相が一段と強まっていった。先進国経済が先行き不透明ななかでFRBによる流動性の供給と、ドル安がコモディティ市場へ資金流入を促した構図は今回も同じである。コモディティ市場では幅広い品目が循環物色され、最終的に最大のコモディティである原油市場に資金が流入して一連のコモディティ相場は終焉したと考えられる。

足元はコモディティ市場で壮大な循環物色もまだみられない。今後も原油高騰まではコモディティ相場の上昇は継続するとみている。

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